2016年1月24日日曜日

3Dプリンタへの期待

「3Dプリンターの今後は?」
3Dプリンターはその可能性を更に高めているようである。
現在でも、金属対応の3Dプリンターはまだ高額なプリンターと技術的な
課題を抱えてはいるが、その社会へ与える影響は次第に大きくなりつつある。
ここでは、現状を概括的に見ると同時に、将来の姿も少し見て行きたい。
1)3Dデータ作成とデータ共有化
ものづくりが一般消費者まで含め、拡大するためには、3Dデータの積極的な
活用が必要である。
そのため、3Dプリンティングの実力を引き出す、新データフォーマット
 Amf(Additive Manufacturing Format)の標準化が米国を中心に進んでいる。
また、関係する動きも出てきている。
・シェアードメッシュの様に3Dデータ販売サイトもある。
  http://sharedmesh.com/
・3Dプリンターのオープンソースを創るコミュニティが出来ている。
RepRap   https://www.facebook.com/ReprapCommunityJapan
RepRapは要請されて開発者が集まったわけではなくて、3Dプリンタが面白いから、
これをやってみたいという人たちが集まったコミュニティー。自分が作りたいから
みんなコミットメントしているし、作ったものはみんなに見せたいからコミュニティー
に見せてフィードバックを受ける。そうした本能的なものがベースにあるので、
その流れで起業する人もいれば、趣味でやっている人もいる。
2)マーケットプレイスの拡大
CADの知識がない人でも簡単にデータを作成することが出来るようになっている。
シェイプウェイズには約1万のショップがあり、毎月約6万点の新しい3Dデータ
が投稿されている。
マーケットプレイスとしては、基本的に二つのパターンに分かれる。
一つはShapewaysのように多数の3DCADデザイナーたちを集めたサイトで、
様々なデザインやいろいろな種類の製品が並んでいる。もう一つは、特定分野
の商品に特化して販売しているサイトである。
特定分野に特化している場合、1人ないしは数人のデザイナーが職人レベルに
仕上げて商品を提供しているのが特長となる。
3)クラウドソーシング
データを創る人、具体的に形にする人のマッチングの仕組みである。
4)3Dプリントサービス
3Dデータをもらったら、それを作り出す、または、具体化するための
支援をする。
5)ものづくりの拠点作り
ファブラボ、など町の中に、自分で製作出来る拠点作りが、3Dプリンター
スキルのアップに向けて必要となる。
http://fablabjapan.org/
FabLab Japanは、私たちが住む日本にもファブラボを設立し、「つくる文化」
や「つくる技術」を広めていくことを目標に、2010年春に活動を始めた。
ファブラボとパーソナルファブリケーションの可能性を広く伝えながら、
日本におけるファブラボのあり方についての検討を行っている。
6)ものづくりのプラットホーム化
日本版Quirky「Wemake」β版がオープンし、21世紀のものづくりのインフラ
を目指している。
https://www.wemake.jp/users/sign_up
将来の姿はどうなるのか
3Dプリンターに関する講演の記事の抜粋から、少し考えてみる。
3Dプリンターによってアイデアの“触れる化”が実現 田中氏は、企業による
大量生産⇒個人による適量生産、消費の楽しさ⇒創ることの楽しさの発見、
特定企業による排他的なプロジェクト⇒異なるバックグラウンドを持った全員
参加型のプロジェクトといった、社会や心の変化を若者が集う大学で
感じられるという。
3Dプリンターで何ができるのだろうか。その方向性として2つの説を紹介している。
1つ目は、製造業に新しい産業革命が起こるという説(メイカームーブメント)。
大規模な生産設備や作業人員は不要になり、1人で製造業に参加できるようになる。
2つ目は新しい情報文化が始まるという説(FabLab:ファブラボ)。情報の中にモノの
データが流通するネットワーク端末のひとつとして捉えることで社会構造が変化する。
例えばFabLabは、世界60カ国250箇所でネットワーク化された地域の市民実験工房と
して利用されている。そこでは、3Dプリンター以外にも大小のミリングマシンや
レーザーカッター、デジタル刺繍ミシン、3Dスキャナーなど、さまざまなデジタル
工作機械が設置され、小学生から大学の研究者まで多様な人々が出会い、新たに
生まれたニーズの可能性を形にしているという。
ファブラボについての紹介がある。
https://www.youtube.com/watch?v=YTwt7ji3EgY
将来の気になるキーワード
①マルチマテリアルの応用
物性のまったく異なるこの二つの樹脂が同時に造形できるのが、マルチマテリアル
であり、さらに、二つの樹脂は同時に造形するだけでなく、混ぜて造形することも
出来る。
デジタルマテリアルは2種類の樹脂の組み合わせにより、適当な割合で樹脂の物性を
段階的に調節する事が出来る。これにより多色性の様々な物体が出来る。
②小型のチップマウンタの開発。
チップマウンタという機械は小型のチップというサイズに規格された
抵抗やマイクロコントローラそうしたものを人手ではなく
機械が自動的に、そして高速にプリント基板の上に配置をしてことが
パーソナルに使えるようになれば、電子的な部品を非常に短期間で誰も
が作れるような環境ができる。たとえば、RFID埋め込み型の3Dプリンタ
があれば、3Dプリンタで樹脂を出力している最中にチップごと一つ中
に埋め込み、その上に樹脂の積層を再開し、完成させると出来上がったものは
ただの物質というわけではなく、その中に情報を書き込んだり、情報を
読み込んだりすることのできる物体になる。
③レプリケーター (replicators)とは
これは、無から有を創り出すものでは決してない。 究極の3Dプリンターの
ようなもので、材料となる分子の原料から必要物資を組み立てる。
日常的な利用目的は食べ物であり、モノの製造もする。
例えばコップを作る場合、船のどこかにコップがあってそれをレプリケーターの
端末まで転送するのではなく、コップの分子構造はメモリーの中にあり、それに
従って組み立てるのである。この場合、制作費用は金属や樹脂類などの原材料と
エネルギーにかかる費用だけであり、もはや現代のような意味の下請けなどは
不要であるし、またコストを押し上げる歩留まりもほとんど存在しない。
以上のように、最小構成素、最小単位というものを設定しそれの分解と組み立て
でものが作れるようになったら、より効率的なリサイクル、リユース
リコンフィギュレーションが可能になってくる。


「3Dプリンターの更なる広がり」
展途上中とは言え、3Dプリンターの活用はあらゆる分野に広がってきた。
紙への印刷と言う2次元世界からディジタルデータを三次元の形あるものにする
という世界がかなりのスピードで、我々の生活を変え、新しい社会環境
を作り出している。手作りの持つ味わい深さを感じるのは、素晴らしいこと
ではあるが、自分の考えているイメージが形を持って、目の前に現われることも
素晴らしいことである。
製造業での本格的な活用や3Dプリンターの価格などまだまだ進化、改善して
行く要因は多いものの、この新しいソリューションに期待が高まる。
樹脂材料を中心に導入が進む3Dプリンターであるが、一方で金属への3D
プリンターの適用は今後どのような見通しになるのか、以下の指摘にもあるように、
まだ不定な点が多い。
・3Dプリンターの導入が欧米を中心に急速に進んでいる。我が国においても、
樹脂材料を中心とした3Dプリンタの導入が進んできているが、金属3Dプリンター
については、その導入の数も少ないため、現状を十分に把握できていない。
3Dプリンタの現状をキチンと把握し、国のプロジェクト(TRAFAM)の開発状況
をフォローして、航空宇宙産業、自動車産業などの製造業への適用の可能性など
について討議する必要がある。
・3Dプリンターは、デザイン力・品質向上、開発期間短縮など試作内製化ツール
として注目されているが、適確な3Dプリンター選びをするための市場動向や
導入効果を事例をキチンと把握しておくことが必要。
・金属系3Dプリンター(金属粉末レーザ積層造形装置)では、さまざまな企業
ニーズに応えるため種々の粉末材料を用いた造形技術の研究開発が必要である。
金属系3Dプリンティングの特徴・造形事例などの把握と鋼系・チタン系・
アルミニウム系粉末などを用いた造形技術の研究を進める必要がある。
・デジタルデータより直接生産を行うDDM(ダイレクト・デジタル・マニュファク
チャリング)の動向を製造業では、キチンとフォローしておく必要がある。
1.3Dプリンターの効果
最近の調査では、導入企業3分の1が製品リリースまで25%以上の改善が見られるなど
その効果は、徐々にではあるが、産業界に認められつつある。
特に、製造業の現場では、10数年以上前から3Dプリンターを活用してきたケース
も少なくない。それまで外注していたプロトタイプの製作を内製化することで、
開発全体のスピード化とコスト削減を実現することが出来る様になって来た。
例えば、3Dプリンターを採用している企業1000社を対象とした調査結果
レポートによると、回答者の3分の1近くが、製品リリースまでの時間について、
先ほども述べたように25%以上の改善が見られた」と回答している。
製造業の現場において、開発期間を短縮し、大幅なコスト削減を実現するために
3Dプリンターは欠かせない存在となりつつある。
最近では、機能向上や使用できる素材の多様化、低価格化など、さらなる進化が
見られ、その結果、3Dプリンタは単なる試作機ではなく、様々なビジネス上の
メリットを生むマシンであることが認識され始めている。
ゼブラ株式会社では、3Dプリンター活用事例として、3Dプリンターで造形
したプロトタイプで、グリップの感触も再現するというような「人間の五感」
に通じる「書き味」を再現し、共有できる強みを作り出している。
ゼブラは、ボールペンの製品開発の過程で3Dプリンターを活用している。
ペングリップは、ボールペンの書き味を左右する重要な要素であり、細密な造形
が求められるが、 「書き味」という人間の五感に通じるものを複数の関係者で
共有でき、形状・素材感を再現できる3Dプリンターの強みを活かしている。
「アイデアをすぐ形にして」「実物を見ながら議論ができる」という点も、3D
プリンターのメリットである。例えば、カーナビ市場をリードするパイオニアは、
世界初となる拡張現実(AR)を採り入れた「ヘッドアップディスプレイ」を
製品化した際も、3Dプリンターを活用した。
「造形したモデルを見ながら、設計の妥当性を確認できるので、意思決定が早まり、
結果として製品開発のスピードも上がります」とのこと。
また、樹脂製の射出成型金型作成では、3Dプリンターが、開発関係者や顧客との
間のコミュニケーションを円滑化する道具として使われるようになってきた。
さらに、3Dプリンターで樹脂製の射出成型金型を作成する企業や、3Dプリンター
から直接、最終製品を作る「ダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング
(DDM)」を導入する企業も現れている。
2.デジタルマニュファクチャリングについて
製造業における「多品種・小ロット・短納期」という今日的な課題にも、3D
プリンターが活躍する領域はますます広がる。これらの様々な課題を解決するために
モノづくりのスピード向上とグローバル展開をITを活用して実現する「デジタル
マニュファクチャリング」は、次へのステップとして、極めて重要なことである。
デジタルマニュファクチャリングとは「モノづくりのあいまいさ,すなわち
暗黙知を形式知化し,更にデジタル値に変換して、ITを最大限に活用するモノ
づくり変革」である。開発や生産に費やす時間(リードタイム:LT)の短縮、
コスト削減,品質向上を妨げる無駄やロスを最小にして,モノづくりのスピード向上、
グローバル展開を実現することが目的である。
デジタルマニュファクチャリングは,モノづくりにおいて単にITを活用すること
ではない。モノづくりの現象や挙動、製造工程、人の動作などを最小の単位まで
分解して形式知に置き換えること、更にデジタル値化し、ITシステムに組み込む
ことが特徴となる。
デジタルマニュファクチャリングを実現するためのアプローチとして、デジタル値
の再現性や信頼性の高さ、加工や再利用の容易さ、時間や距離を短縮できる、など
の利点を考慮したデジタルマニュファクチャリングには、以下の5つの形態がある。
①技術・技能の数値化
この形態はデジタルマニュファクチャリングを進めるうえでの基本となる。
開発や生産における技術や技能、運用ルールなど、あいまいなノウハウを形式化し、
プロセス条件や現象をデジタル化するアプローチである。
②データの情報への変換とその活用
データは単なる数値の集合体であり、意思決定や判断に活用できる情報に変換する
ことが重要となる。例えば、製造現場における生産の進捗や品質のデータをリアル
タイムで抽出し、品質や生産性を改善するための指標など、有意性のある情報に
加工してそれを活用することが必要である。
③仮想設計・製造
製品の性能・構造、生産プロセス・装置の現象や製造ラインでのモノの流れを
コンピュータ上でシミュレーションし、むだな試作や開発の後戻りを最小化する
アプローチである。
④データの一貫・一括活用
製品の情報やデータを,開発や生産の上流から下流まで一貫して活用し、更に複数
の部門で同時期に一括して活用するアプローチである。例えば、製品の設計情報を
試作、製造、量産立上げまで活用したり、営業が得た情報を調達、製造、販売まで
活用するなどが挙げられる。
⑤グローバル遠隔管理
インターネットやイントラネットなどのネットワークを活用し、時間や距離を
超えて、遠隔地から生産状況や品質の監視と制御、生産装置の診断や保守を行う
アプローチである。
これら5つの形態をもとに様々な製品、事業、開発、生産の状況に適合した
デジタルマニュファクチャリングの姿を描くことができる。
モノづくりの活動は、商品企画から製品の設計、ライン設計、立上げと続く開発の流れ
と受注から調達、製造、物流、販売までの生産の流れの二つに分けてとらえることが
できる。
開発での課題は、製品の高度化に伴う試作回数の増加や開発の後戻りの発生である。
一方、生産での課題は、生産拠点が分散して一か所では現場管理できない、従来の
見込み生産では市場の変化に対応できないことなどである。両者で共通した課題は、
人手を介した直列的な情報の受け渡しでLTが長くなることが挙げられる。
これらの課題を解決するためのツール開発やシステム構築がデジタルマニュファク
チャリングの具体的な取組みとなる。
3.3D対応の進化
「ファッションや食品など、これまでとは違った異業種が注目されている。この傾向は
今回アメリカや日本で開催されている展示会などではっきり出てきている。
BtoIへの流れを感じたきっかけというのはファッション業界との取り組みが大きい。
自分たちで流行を作って、在庫見込を計算して9号や10号など規定サイズで
生産するわけだが、必ず見こみ違いの在庫不良が出るので、それをセールで売り
つくすことになるというのが昔からの課題。この当たり前とされてきたサイクルを、
当たり前ではないのではないかと気付きはじめている人たちがいて、それを解決する
のはやっぱりBtoIという考え方ではないかと考えている。つまり、規定のサイズ
を作り置きするのではなく、需要に応じて作れるシステムとプロセスというのを
完成すればいいじゃないかと考えている。型紙の代わりに人体データがあれば、
1本の糸から紡いでワンピースとかカットソーを作るぐらいの技術力を持った企業も
ある中で、決して遠い話ではない。
これからは、消費者という一括りにした対象ではなく、BtoI、個人(Indevidual)
としてより細分化したニーズや個性に応えてゆく必要があるし、それができる
ものづくりに移っていくと考えられている。
そういったシーンでは、3Dスキャナや3Dプリンターが使える。
3Dプリンターによりフルーツや野菜が本物そっくりの立体造形物として完成
するという情報番組がときどき放送されているが、この最新フォト技術を人体に
応用して本物そっくりのフィギアをつくる、それをポートレート写真のような
位置づけで展開しようという試みでスタートした「3D写真館」が注目をされている。
「新しい創造」=「新しいプロセスから」というのがチームのコンセプトで、
クリエィティブのプロセスにおいてユニークな提案をしている未来的発想の
クリエーター集団である。彼らはこれまでの平面的な写真という記録ではなく
立体としての記録、そのような考え方の新スタイルフォトを実現した。
これは、3Dスキャナーの進化が大きい。
これはモデルを3Dスキャナーにより撮影し、まずポーズを決めてから15分程度
静止状態を保つ。その間に専門スタッフが、人体フォルムから洋服のシワに至る
まで細かくスキャニングする。仕上がりに関しては、モデルサイズが大きいほど
精密でリアルに再現できるという特長を持っている。
このように、3Dスキャナーと3Dプリンターの進化により、3Dの世界はパソコン
の画面の中だけのものではなく、実際に手に触れられる情報再現機能として
進化している。
そして、最近では「3Dペン」も登場してきた。ペン型のツールに小さな
パワーケーブルを接続、パソコンのUSBポートとつないで専用フィラメントを
入れて描くと、空間に絵を描いているような立体画像が完成する。ぺンツ―ルは
小さく軽く、快適で使いやすい。
「3Dプリントしたいけど、3Dモデリングは難しいと思っている人でも、
簡単に遊びながら3Dモデルをつくれる」というコンセプトで、より多くの人が
活用していく環境が出来つつある。
価格的にも、例えば、これまでda VinciシリーズでFFF(熱溶融積層)方式の3D
プリンターを出していたXYZ Printingでは、同社初のSLA(光造型)方式となる
「Nobel 1.0」が約17万6000円の価格で展示されたり、ついに349ドル(約4万1000円)
の価格のエントリー機の「da Vinci Jr.」や3Dスキャニングから出力までを1台
でこなせるオールインワン3Dプリンタ「da Vinci 1.0 AiO」(799ドル、
約9万4000円)など、高機能化、低価格化は益々、加速化している。
さらに、XYZ Printingは「3D Food Printer」への対応も進めている。プリント用
素材として、パン生地やさまざまな味を持つペーストが用意されており、これを
出力することでベースとなる“生地”が作成され、後はオーブンに入れて焼けば
クッキーやピザなどが完成する。
以上のように、3Dプリンターやスキャナーなど、ハードの進化は目覚しいが、
今後のポイントは各業界や分野におけるデータをキチンと整備していくことである。
3Dデータは、製造・建築・土木・宝飾・アクセサリーの分野においては、CAD/CAM
という呼び名であり、アニメーション・映像・立体視映像・画像・ゲーム製作・
地図情報・医療の分野においては、CGという呼び名で一般化しており、すでに
これらの産業分野で不可欠なものとなっている。同じ3Dデータを使いながら、
3DCADと3DCGの距離は遠いものとなっているが、あらゆる産業が従来の
構造から変革を迫られる中、3Dデータを共通項とすることで3Dデータ業界を
活性化していく必要がある。
京都周辺でも、幾つかの研究会がある。
京都産業21の3Dプリンター研究会は製造業向けでもあり、最新の
金属3Dプリンターの動向が分かる。
以下のものは個人ベース的な研究会であるようだが、このような会がもっと
増加して欲しいもである。
http://www.3dprinter-lab.jp/client/boshu/detail/12/14/


「産業用3Dプリンター近況」
産業用3Dプリンターへの本格的な取り組みがようやく
始まったようである。既に、一般用については、数回ほど
記事を書いているが、一般分野でも、国外での様々な動きに
して、かなりの遅れが目立っていた。産業用については、
更に、その遅れを感じている。一般分野では、3Dデータ
としてのネットとの整合性の良さから、何時でも、何処でも、
誰でも、の感覚で大きなマーケットプレイスも拡大している。
ディジタルファブとしての裾野の広さは、我々の生活や社会
環境も変える可能性も持っている。
また、産業用は、日本のモノづくりとしての根幹に関わる
問題のはずなのに、先進的な中小企業の独自の取り組みに任せる
のみで、国としての総合的な基盤創りとしての戦略がない様
でもあったが、ようやく具体的な動きが出てきた様である。
1.国の産業向け3Dプリンター事業の目的
(三次元造形技術を核としたものづくり革命プログラムより)
切削加工、溶解・鋳造等に次ぐ第3の加工法とされる三次元積層造形
技術の進歩は、軽量でこれまでにない機能や複雑構造を有する等の
高機能製品の開発を加速するだけでなく、商品企画、設計、製造プロセス
のデジタル化の進展等が伴うことにより、地域、中小企業、個人の知恵
や感性を活かした新たな付加価値を持つ製品の創製、商品企画から設計・
生産までの時間を大幅短縮、地理的、空間的制約からの開放など、もの
づくりに“革命”を起こす潜在力を秘めているとされ、欧米では製造業
の再生の柱として三次元積層造形技術の開発が活発化している。
我が国においても新たな成長戦略である「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-」
において国家プロジェクトとして推進すると位置づけるとともに、
「科学技術イノベーション総合戦略~新次元日本創造への挑戦~」
(6月7日 閣議決定)においても、三次元積層造形装置等の高度な生産技術
を地域のものづくり産業に適用することを明記されている。
我が国ものづくり産業がグローバル市場において持続的かつ発展的な競争力
を維持するために、地域の中小企業等の持つ技術や資源を活用し、少量
多品種で高付加価値の製品・部品の製造に適した三次元積層造形技術や
金属等の粉体材料の多様化・高機能複合化等の技術開発及びその周辺技術
の開発を行い、次世代のものづくり産業を支える三次元積層造形システムを
核とした我が国の新たなものづくり産業の創出を目指す。
2.金属用3Dプリンターの絶大な効果、コスト削減と性能向上
3Dプリンターは、さまざまな業界に多くのメリットをもたらすが、
とりわけコスト削減と性能向上という二つのメリットが大きい。この側面
からメリットが期待されるのはGEやエアバスといった航空宇宙産業や
フォードなどの巨大な自動車産業だ。
従来の製造方法から3Dプリント製造に切り替えることで莫大なコスト削減
効果をもたらすと期待されている。
例えば、GEは、ジェットエンジンの燃料ノズルを3Dプリンターで作ること
で莫大なコストを削減することを可能にしている。
そのコスト削減効果は、製造に関する直接的なコスト、すなわち金型代や
材料コスト、エネルギー料といったものにはじまり、間接的なコスト、
すなわち軽量化によってもたらされる燃費向上と燃料代の削減といった
ものまで及ぶ。
3.金属用3Dプリンター技術開発とは
(三次元造形技術を核としたものづくり革命プログラムより)
三次元積層造形技術開発について、世界最高水準の次世代型産業用三次元
積層造形装置の開発を行い、航空宇宙分野、医療機器分野、産業輸送機器
分野等において、これまでできなかった製品、形状が複雑でいくつかの
加工技術を組み合わせないと製造できなかった製品ないし自由で複雑形状等
の高付加価値製品等の製造を実現する。金属粉の焼結・溶融に適した高速
レーザー装置等の開発から、造形雰囲気の制御、金属粉の積層技術の高速化等
の日本のものづくり産業の強みを有する部分での開発を行い、積層造形
速度が、現在の10倍、製品精度が、現在の5倍となる高速・高性能別
三次元積層造形装置を開発し、さらに、開発が終了する2020年に当該装置
を実用化する。また、金属だけでなく鋳造鋳型用の砂やセラミックス等に
ついて、積層造形装置に使用できる部材としての開発や、材料の複合化・
高機能化、後加工技術、未使用材料の回収等の周辺技術開発についても
実施する。さらに、三次元積層造形に係る材料等の基盤技術の研究開発
も合わせて行うことにより、次世代のものづくり産業を支える三次元積層
造形システムの高度化を図る。
4.今後の可能性について
3Dプリンター普及のネックとなっているのは「スピード」と「価格」。
現行の産業用3Dプリンターのシェアは外国製が中心で、1台1億円の機種も
珍しくない。こんなに高価なのにもかかわらず、従来の工法と比較したとき、
単に性能を高めればいいわけではない。
一つの重要な視点として、「日本の職人の技術と3Dプリンターをどう
フィットさせるか」がある。「3Dプリンターで高精度の砂型をつくった
としても、例えばどのような角度から、どんな速度で溶かした金属を
注入すればよいのかを熟知していなければ、質の高い製品をつくること
はできない。日本の鋳造技術は世界でもトップクラス。工程のなかに、
熟練した鋳造職人のノウハウと3Dプリンターをうまく取り込めば、
日本の強みを最大限に活かしたものづくりができる。中小企業も含め、
製造現場に新しい発想をもたらす近年は「型」にとどまらず、金属粉を
溶かして固め、直接「製品」を造形する技術も急激な進化を遂げている。
「この方法なら切削では困難だったメッシュ加工や中空加工なども
思いのままとなる。研究を段階的に進め、いずれは複数の種類の金属
を組み合わせる複合組成の技術も確立し、こうした繊細さが求められる
加工は、まさに日本の得意分野であり、欧米をリードする技術に成長
する可能性も十分にある。
3Dプリンターは、より自由な発想を後押しする。せっかく素晴
らしいアイデアをもっていても、形にする技術がないために消えていった。
そんな例は無数にある。これまでの枠組みにとらわれない、新しいもの
づくりが広がって行く。


「3Dプリンター活用の企業の今、そしてこれから」
今、旬な技術として、あちらこちらで、3Dプリンターの話題が出ている。
永らく、製造業に携わった人間としては、モノづくりに多くの人が興味
を持ち、モノを創ることの喜びを感じてもらうことは、喜ばしい。
しかし、3Dプリンター(少し前までは、この名前も違っていた様であるが)
を自社のビジネスに以前から適用できるとして頑張ってきた企業も少なからず
おられる。その意味では、先進企業と言われる方々である。前回の投稿では、
全般的な3Dプリンターについての話をしたが、今回は、この辺を中心に、
少しフォローしてみたい。
1.3Dプリンター活用で、頑張ってきた企業
1)株式会社十川ゴム
「デジタルエンジニアリングによる提案型開発」を3Dプリンタにて実施してきた。
①基本的な考え方を関係メンバーが述べておられる。
「それまでは、私たちのお客様である完成品メーカーが部品の設計までされていて、
お客様からのご指示通りに作ればよかったのですが、少量多品種化の影響から
設計部の仕事が増えたためか、部品の設計を我々部品メーカーにご依頼いただく
ことが多くなってきました。そのため、これまでのように受け身で待っている
姿勢では通用しないことを実感し、自らさまざまなアイデアを出す「提案型
企業」に変化しなければならないと思いました。
更に、自動車、家電や住宅設備など、様々な製品で市場の変化に対応すべく
頻繁にモデルチェンジを行うようになり、そのスピードに追随しなければ
ならなくなったことです。」
求められる提案力、頻回なモデルチェンジへの対応。積み重なる課題に研究
開発部は対応策の一つが3Dプリンタの導入であった。
サンプルモデル造りが自社ですぐにできることで、提案のスピード化にも
つながるだろうと考えたのである。
そして、2008年春、「Dimension(ディメンジョン)」を導入する。
更に、治具の種類と製作期間の短縮化のために、「生産ライン」にも3D
プリンタ-を活用しようと考えた。設計時に使ったホースの3Dデータを
治具製作用に加工して3Dプリンタで造形。スピードは大幅に短縮された。
更に、3Dプリンターの適用を検討している。
2)株式会社クロスエフェクト
光造形、真空注型による「高速試作」を主サービスとして、 24時間以内の
世界最速のモノ造りを目指し限られた時間内での開発を徹底的に支援している。
光造形は、3次元CADデータを元にレーザー光線と光硬化性樹脂を用いて積層
造形し、3次元CADでデザインされたモデルと寸分違わない実物モデルを短納期
に作成する。より速く、より微細な立体モデルを造り出し、開発期間の短縮、
コストの圧縮などさまざまなメリットをご提供している。
また、真空注型はマスター(光造形や切削加工品)をもとにシリコーン型で複製する。
意匠面の確認や金型製作前の検討用モデルとして短納期かつ安価に製作出来る。
これら基礎技術に加えて、「企画・設計段階からサポートするRapid Design
による高速デザイン・設計技術」で速いものづくりを目指している。
特に、心臓シミュレーターは、その精度とスピードにおいて、高い評価を受けている。
更に、20数名の会社ではあるが、IT経営推進を実践し、社員との「目的と目標
の共有」をはかっている。スマートフォン、グループウェア、Webなどのデジタル
を最大限活用する事で会社を変えるという明確な方向性を打ち出し、他社には真似
のできない卓越した時間及び原価管理システム等を構築してきた。
3)株式会社ジェイ・エム・シー
3Dプリンタを使ったクラウドファンディングによるたRAPIRO(人型ロボット
作成キット)開発を推進した。中小企業4社連携でのプロジェクトである。
このキットを製品化するためクラウドファンディング「KickStarter」で公開したとこ
ろ世界中のメディアに掲載され、公開から12時間で目標金額20,000ポンド(約300万円)
の半数を達成し、最終的に1,260万円調達した。
このキットは、「ここまでこう動いた方が、ロボットマニアにも訴求するのでは」と
いうところまで考えて、設計しているとのこと。その設計では、3Dプリンタで繰り返し
試作品を作成し、3Dデータも公開し、3Dプリント可能な製品にしている。
13年前から3Dプリント事業をおこなう老舗メーカーであり、3Dプリンタの
オペレーションを10年間経験した作業者として頑張ってきている。
4)株式会社 東京マルイ
東京マルイは、エアソフトガン業界でトップシェアを誇る企業である。
「多くの人が手に取って、動かして遊ぶホビーを造る――」このモットーは
世間の信頼を得てこそはじめて実現する。どのような状況においても、
この考えを守り通し、工夫と知恵を絞ってきたところに、東京マルイの企業
としての強さがある。
「エアソフトガンは、プラスチックと金属の2つの材料を組み合わせて製造します。
試作品は、それぞれ別々の専門業者に外注していました。納品される試作部品は、
NC加工によって製作し、キレイで完成度も高いものに仕上がるのですが、製作
コストが高く外注費がかさんでいました。また、寸法確認や組合せ等を検証した
結果、設計図面に少しでも修正が入ると、修正の程度にもよりますが、それを
反映し再度試作を外注しなければなりません。ということは、前の試作品に
かかった外注費用は全て無駄、期間も倍かかる、ということになってしまいます。
そのため、図面が完全になってからでないと試作品作成に進めないのです。」
効率よく試作品を作れる環境を整えたい。それができれば、これまで以上に
新しい商品をお客様に提供できる。そんな想いから東京マルイでは、この問題を
解消するシステムを探し始め、3Dプリンタ Dimension(ディメンジョン)の導入
を決めた。
Dimensionはモデル材料にABS樹脂を使用する。このため、複雑かつ強度を必要と
するエアソフトガンの内部部品の動作確認でも、問題なく機能する。金属部品と
ABS樹脂部品を組み合わせて、試作品を作り、動作を検証する。
「Dimensionで出力した試作エアガンを動かしてみると、動き具合や身体に伝わる
衝撃の大きさなどが、実製品にかなり近いのです。そのため新しい製品の動きを
開発の途中段階からシミュレートできるようになった。」
5)ひとり家電メーカーの誕生
 「真・善・美」の精神で世の中を変えるモノ作りを目指すBsize(ビーサイズ)株式会社
・事業概要
「家電メーカー」として、企画を立てて家電製品をデザイン・設計開発・評価検
証をし、ブランディングから販売に及ぶまでを代表一人で行っている。
・第一弾製品となったSTROKE(ストローク)
モノ本来の色を忠実に再現し、目に優しく自然光に近い光を取り入れたLEDデスク
ライト。鉄とアルミから成る細いパイプ1本を曲げただけのシンプルなデザインと
リサイクル性が高く省エネルギーで長寿命な設計にこだわった。
・ビジネスの現状と展望
「デザインとテクノロジーと社会貢献」をミッションに掲げている。ギリシャ
哲学「真・善・美」=「学問と道徳と芸術の追求」からヒントを得たものであり、
デザイン(芸術)とテクノロジー(学問)と社会貢献(道徳)の全てがそろった
モノづくりをしていくことが、何百年たっても「いい商品だね」と言ってもらえる
普遍的な価値をユーザーに提供し、世の中を良くしていくことにつながると
考えている。
創業時から最近まで、組み立てから発送まで一人で行っていたが、注文が伸び始め、
製造台数を増やすため、今は近くの工場に組み立てを外注している。
2.3Dプリンターのこれから
1)3Dデータの拡大
Meticulous(メティキュラス)」という言葉がある。日本人気質を欧米人が揶揄する
ときとかに使う。神経質すぎるとか、重箱の隅をつつくとかそういった意味である。
日本のものづくりは、こだわりがある。こだわるから完成度の高い製品ができる。
Meticulousだからできる。そのこだわりを製品開発の初期というかアイデアの段階
から引き出せるのが3Dプリンターと考えられる。
3Dプリンターで部品を作ることで、その部品を制作するための金型を作る必要がない
というメリットはあるが、これは、特に進化の著しい製品や小ロットの量産製品に
おいては有効となる。こういった製品は性能を向上させるために、頻繁に設計変更
がかかり、金型を作ってしまうと、設計変更のたびに金型を補修しなくてはならない。
このコストはバカにならない。
また、頻繁に交換が生じるような消耗部品にも有効。部品の3Dデータは自社のWeb
サイトなどを通じてユーザーに提供してしまう。そうすることで、その消耗部品に
交換が生じた場合には、ユーザー自身が3Dプリンターで制作できるようになる。
メーカーとしては、金型を保有する必要がないばかりか、部品を在庫として持つ
必要もなくなる。
このため、3次元データの拡大もしっかりとして行く必要がある。
これからはもっと手軽に3Dデータを作れるツールが出てくる?さらには、
3Dデータを作成、編集するサービス業者なども多くなってくるかもしれない。
3次元データに関連するビジネスが、これからもっと広がる。
また、広げるためのビジネスモデルの構築が必要でもある。
2)クラウドソーシングでの拡大
以前のクラウドの記事でも述べた様に、海外ではoDesk、国内ではランサーズや
クラウドワークス等で活気づいているクラウドソーシングサービスだが、3D
プリンティングに特化したクラウドソーシングサービスが登場しつつある。
3Dプリンターで出力したいデータをサイトにアップロードすると複数の3Dプ
リント業者から出力するための費用見積もりが提示される。
例えば、国内で工業製品向けのハイスペックな3Dプリンターを保有している企業
が、自社製品のプロトタイプ作成だけではなく、外部からの受注を個別に受けて
3Dプリンターを稼働させるのも1つであり、ネットの拡大は、リソースの有効化、
平準化を進める。
①Quirkyの成功
Quirkyは42万7千人の登録会員からなるコミュニティによってアイディアを製品化
するクラウドソーシングサービスであり、「こんな便利なものがあったらいいのに」
などのアイディアも、今ではQuirkyが一緒に実現してくれる。
・Quirkyの仕組み
投稿されたアイディアをQuirkyがクラウドを使い、製品化の判断、デザイン、価格
設定を行い、最終的に製品が売れると、その10%-30%が発案者とクラウドの協力者
に支払われるという仕組み。Quirkyのオンラインショップでは、このプロセスに
より生み出された夢の膨らむアイディア製品が盛りだくさんにある。
・そのスピード
通常P&Gなどで1つの製品が生まれるには18-24ヶ月という長さが常識です。それに
対してQuirkyではアイディアが生まれてから製品が棚に並ぶまで120日という短期
間で製品化を成し遂げる。しかも、3Dプリンターでプロトタイプを作り即クラウドに
よるフィードバックをとり反映させることで、リスクをできる限り取り除く。
・トップレベルのデザイナー陣
ハイスピードなカルチャーでQuirkyは、トップレベルのデザイナーを囲い込むこと
に成功している。5-10もの製品のデザインを同時並行で進めるということ自体が、
幅広いポートフォリオのデザインを手がけたい優秀なデザイナーにとっては魅力的。
②Quirky事例より見るクラウドソーシングのトレンド
・クラウドを利用したプロジェクトマネジメント
現在あるクラウドソーシングサービスから一歩踏み込み、Quirkyは各ステージで
クラウドの力を利用しつつも、プロジェクトをゼロから完成まで主体的に動かす。
クラウドソーシングは「仕事の質が低い」「単純作業しか依頼できない」との話も
あるが、このようなプロジェクトマネジメント機能を加える事で確実に結果を出す
ことができる。
・レベニューシェアによるリスク低減
通常は売れるかどうか分からないアイディア製品も、売れた場合のみ売上げの中
から発案者とサポートした人たちに支払われるレベニューシェアの形式をとること
で開発段階の初期投資のリスクを低減している。発明的アイディアを扱うケース
のみならず最後まで成功が読めない事業では、こういったクラウドに対しての
報酬を売上げに連動させる形が成功の鍵となる。
・事前に消費者を巻き込みファン化する「プレシューマー」の存在
Quirkyは一緒にアイディアを実現するというインセンティブによりうまくクラウドを
巻き込むことで、消費者インサイトの反映された製品化と開発段階からのファン育成
(=未来の製品購入者)に成功している。この開発初期段階からサポートしてくれる
プレシューマーたちは開発に自分たちの思いが反映されることからいち早く口コミ
を起こしファン育成が出来る。
3)手軽に、モノづくりが出来る場所作り
日本では、ファブラボが大学、企業などを中心に、作られ始めているが、アメリカ
では、ハッカースペース(Hacker Space)、一言で言うとモノづくりをする人達が
集まる共同の作業工房、が各地に出来ている。アメリカやドイツのハッカー(モノ
づくりをする人)が中心となり、2005年頃からニューヨーク、サンフランシスコ
といった都市部で立ちあがり、現在までに全米700箇所に数を増やしている。
大きさは数十坪程度の小さところから数百坪程度の比較的大きなところまであり、
3Dプリンターやレーザーカッターを始め、溶接機、切断機、金属加工場、木工作業場、
といった所謂、三種の神器を含め、各種のモノづくり機器が用意されている。
その多くは会員性で、会員は月に100ドル程度の会費を払ってツールやマシンを
利用出来る。
ハッカースペースは、単にモノづくりのツールやマシンを提供するのみならず、
そこに集まる人々が交流するためのコミュニティにもなっていて、実際にハッカー
スペースを拠点にした共同プロジェクトやベンチャー企業が続々と誕生している。
以上のように、
次世代工作機械の柱となる3Dプリンターの特性を知り、経営に生かしていくことは、
今後の競争力強化のうえで極めて重要である。一方、中小企業からは、3Dプリンター
を活用したいがその方法が分からないとの声が多い。そこで、3Dプリンターの機能・
特性を踏まえた効果的な導入・活用法や公的支援策(補助金・税制/公設試験研究機関
による支援など)に関する相談に応ずるとともに、その場所作りや3Dプリンター
製造・販売元、3Dデータ作成研修機会、3Dデータ作成代行業や出力サービス業の
紹介などを行うワンストップサービスの実現等、面的な支援を充実させていく必要
がある。


「中小製造業でも3Dプリンターを意識する時期かも?」
3Dプリンターは、個人的なレベルでの拡大がメディアで
喧伝されており、一部の人からは、異常と言われているようである。
1990年代のインターネットの黎明期には、同様の現象があったのも、
既に、過去の話になっているようではあるが、事実である。「インターネットは
空っぽの洞窟」など、セセコマシイ指摘はあったものの、今の現状はどうで
あろうか?既に生活の一部に成りつつあるのも事実である。
3Dプリンターも同じ流れの中にあるのでは?と個人的には、勝手に思っている。
そして、コレは中小企業としても、意識する時期に来ているのでは、ないだろうか。
1.全体状況を概観する。
2014年度から5年間計画で始まる国家プロジェクトでは、産業用3Dプリンターの開発
プロジェクトに、40億円が予算計上され、装置開発から、公設試験場や教育機関への
設備導入支援も進められている。人材育成や企業のあり方など、国による施策
も具体化してきた。
レーザービームまたは電子ビームの金属3Dプリンターと、鋳造用型を作製する
3Dプリンターについて、世界最高レベルをめざすのも、その一つである。
また、企業レベルでも、3Dプリンティング技術の活用新規事業・商品を素早く
生み出すための試作工房を立ち上げたり、金属積層造形による高付加価値部品
の実現を目指した入りしている。
具体的な動きとしても、金属部品や組立品の製造を手掛ける中国企業が、
日本企業の「レーザーによる金属粉を溶融しながらの積層造形と切削加工に
よる仕上げを組み合わせた工作機械を導入し、複雑な形状の金型を高速に
製作することにより、優位化を図ろうとしている。
産業レベルでも、大きく深化しつつある様である。
1)3Dプリンター概況
専門レベルでは、AddictiveManufacturing技術として7つに分類される、とのこと。
詳細は、専門家に任せるが、低価格向けとしては、「材料押出システム」が一般的。
金属部品、樹脂部品のいずれにも対応できる「粉末床溶融結合システム」と
金属部品が中心で今後の直接ものづくりに有効な「指向エネルギー堆積システム」
がある。
2)3Dデータ作成とデータ共有化
ものづくりが一般消費者まで含め、拡大するためには、3Dデータの積極的な
活用が必要である。
そのため、3Dプリンティングの実力を引き出す、新データフォーマット
 Amf(Additive Manufacturing Format)の標準化が米国を中心に進んでいる。
また、関係する動きも出てきている。
・シェアードメッシュの様に3Dデータ販売サイトもある。
  http://sharedmesh.com/
・3Dプリンターのオープンソースを創るコミュニティが出来ている。
RepRap   https://www.facebook.com/ReprapCommunityJapan
RepRapは要請されて開発者が集まったわけではなくて、3Dプリンタが面白いから、
これをやってみたいという人たちが集まったコミュニティー。自分が作りたいから
みんなコミットメントしているし、作ったものはみんなに見せたいからコミュニティー
に見せてフィードバックを受ける。そうした本能的なものがベースにあるので、
その流れで起業する人もいれば、趣味でやっている人もいる。
3)マーケットプレイスの拡大
ShapeWays、Thingiverse、Rinkak、テックシェアなど国内サービスも含め
更なる拡大をしている。
①ShapeWays   http://www.shapeways.com/
3Dプリントサービスが主である。
ユーザーはウェブサイトを通じて3Dプリントを1個から依頼することができる。
製造されたオブジェクトは約2週間ほどで発送され、世界中どこからでも製造
を依頼することができ、格安で利用することができる。3Dプリンターを
持たなくても高品質の3Dプリントが行える。
3Dプリントができることはわかったけど、3Dテクノロジーでデータを作ること
ができない。そんな人のために3Dデータを作るためのアプリが用意されている。
CADの知識がない人でも簡単にデータを作成することが出来るようになっている。
シェイプウェイズには約1万のショップがあり、毎月約6万点の新しい3Dデータ
が投稿されていえう。
https://www.youtube.com/user/Shapeways
②Rinkak
https://www.rinkak.com/
国内でもシェイプウェイズのようなマーケットプレイスを開発する動きが起こって
いる。
デジタルモノづくりマーケットのrinkakは3Dデータの作り手と、ユーザーがつながる
マーケットプレイス。デザイナーは制作した3Dデータをアップロードし、
ページを訪れたユーザーがその商品を気に入れば、購入ボタンをクリック。
データは提携工場へとと送られ、製造が始まる。デザイナーはデータが購入される
ごとに報酬を受け取る。
rinkakやシェイプウェイズなどのデータを販売できるマーケットプレイスが
充実することで、データをユーザーに販売することがもっとカンタンになる。
モノはデジタルになり、アプリを作るように、モノを作れるようになった。
3Dプリントされた製品を販売するマーケットプレイスとしては、基本的に
二つのパターンに分かれる。
一つはShapewaysのように多数の3DCADデザイナーたちを集めたサイトで、
様々なデザインやいろいろな種類の製品が並んでいる。もう一つは、特定分野
の商品に特化して販売しているサイトである。
特定分野に特化している場合、1人ないしは数人のデザイナーが職人レベルに
仕上げて商品を提供しているのが特長となる。
3Dプリント販売に大手が続々と参入する傾向は今後もますます拡大する。
特に大型小売店や、大手メーカーの参入が加速すると思われる。こうした企業は
既に多くの顧客を抱えているだけではなく、製品開発に関わる体制や、販売
ネットワークを既にもっているためだ。
将来的に生き残る企業は、アマゾンのような多数の3DCADデザイナーとユーザー
を集めた巨大なマーケットプレイスか、製品ラインナップを多く持つ大手メーカ
ーか、リアルな世界で巨大な顧客層を持っている大手小売りチェーンの3つ
に集約される。
Amazonが個人向け低価格3Dプリンタを扱う「3Dプリンタストア」をオープン
したのもその流れの表れかもしれない。
従来からの3Dプリント製品の販売サイトは、特定分野に特化しない限り生き残り
は難しい。ここでも、インターネット拡大に伴う様々なビジネスの盛衰と同じ
ことが起きると思われる。
こうした個人レベルのものづくり、すなわちパーソナルファブリケーションが
進むと、多くのアイデアやデザインを表現することに能力を発揮するデザイナー
の登場をますます加速させる。すでに大手以外で3Dプリント技術を利用して
カスタムメイドの製品を作り始めているデザイナー集団も登場してきている。
これからの時代は超大手か、職人レベルに特化したデザイナーの二つに分かれる。
4)クラウドソーシング
データを創る人、具体的に形にする人のマッチングの仕組みであるが、3)項の様な
大手と特化型サービスの2極化が進むのであろう。
①3Dプリンター特化型クラウドソーシング「CowFab」
海外ではoDesk、国内ではランサーズやクラウドワークス等で活気づいているクラウド
ソーシングサービスだが、3Dプリンティングに特化したクラウドソーシングサービスが
登場している。3Dプリンターで出力したいデータをサイトにアップロードすると
複数の3Dプリント業者から出力するための費用見積もりが提示される。
取引額の5%がCowFabの手数料として発生するビジネスモデルだ。
この様に、国内で工業製品向けのハイスペックな3Dプリンターを保有している企業
でも、常にそのプリンターは稼働している訳ではなく、個別に出力を請け負った
りもしている場合がある。最先端の高額な3Dプリンターを保有していても、稼働
せずに休眠状態にあるのであれば、自社製品のプロトタイプ作成だけではなく、
このような外部からの受注を個別に受けて3Dプリンターを稼働させるのも有り
なのかもしれない。国内でも似たようなサービスが最近はじまっているので、
今後は3Dプリンターを持っていない人でも、データさえあれば3Dプリンティングを
気軽に試せるようになるかもしれない。
②クラウドソーシングでも、3D関連が増加
クラウドソーシング大手「freelancer」が、2013年第2四半期で、伸びている仕事
の受注件数トップ50について詳細データを発表した。
1位は、イラストレーターを使ったデザインの仕事が19,7%増、フォトショップデザイ
ンが僅差で続いて19.4%増。続いて、3Dレンダリングが17,3%増、3Dモデリングが12,5
%増、3Dアニメーション製作が11,7%と続いている。
③「地域のホームセンター」の可能性
カインズホームなどを含め、ホームセンターで「工具レンタル」を行っているところ
がある。
場所によっては工作室を完備しているところもあり、これまでの「消費拠点」が
これから「生産をする現場」へと進化して行く可能性もある。
地域のコワーキングスペースやコミュニティー、3Dプリンタを持っているような個人
が、地域のホームセンターと密接な連携すれば、可能かもしれない。
5)クラウドファンディング
3Dプリンターを皆で開発する、そのための資金集めには有効である。
kickstaterで様々なプリンター開発が盛んである。
https://www.kickstarter.com/projects/
3DベースのロボットRAPIROの製作者の弁。
「一番のポイントは、Kickstarter上に新しいことに挑戦する人たちを応援し、それを
見守ってくれる 文化があることです。RAPIROも、配送が当初の予定よりも遅れるなど
のトラブルが発生しましたが、トラブルが発生したことやそれに対してどのように対処
しているのかをきちんと説明すると、ほとんどの人が理解を示し、温かい応援のメッセ
ージやコメントを送ってくれました。開発者が最善の努力を尽くし、支援者もプロダク
トを期待しながら待ちわびている様子は、作り手にとってとても嬉しい開発環境だと言
えます。また、ユーザー同士のコミュニケーションも活発で、ユーザー同士で質問
しあったり議論したりするのも、この文化があるからこそだ。」
6)3Dプリントサービス
3Dデータをもらったら、それを作り出す、または、具体化するための
支援をする。
3D出力サービスの発注手順は、おおむね下記の通り。選べる素材が異なる他、サービス
にもそれぞれ特徴がある。キンコーズは写真から立体的なレリーフを作製する「3Dフォ
トレリーフ」も提供。オフィス24はパ ーソナル3Dプリンターのセルフ化にも乗り出し
た。DMM. comは、米シェイプウェイズなど、海外のサービスと同等の安い価格を打ち出
す。3Dデータの出力環境は、2013年春以降急速に向上している。
見積もり・発注から受け取りまで
・素材やサイズでサービスを選ぶ
・3Dデータをネットで送信、あるいは店頭持ち込み
・見積もりを確認してから発注
・納期日に造形物を郵送あるいは店頭で受け取る
①東京リスマチック:先行してビジネス化した 豊富な経験が強み
http://www.lithmatic.net/
納期/5営業日以内  3Dデータのオンライン入稿に対応するとともに、東京駅に程近い
千代田区内神田で「立体造形工房 神田」を運営する。3D出力の相談やデータの持ち込
みにも対応するカウンターを備えた工房で、間近に稼働中の業務用3Dプリンターを見る
ことができることから、東京への出張の際に、見学も兼ねて訪れるビジネスマンもいる
という。サービスはアクリル樹脂で出力する「ハイエンド立体造形出力」と
石膏フルカラーで出力する「フルカラー立体造形出力」の2系統。業務用3D
プリンターは、アクリル対応4台と石膏対応1台を備えているが、近く新型機の導入
も計画している。
他にも、
②DMM.com:海外サービスと同等の安さ、3Dデータの造形販売も行う
③オフィス24:3D出力の総合サービス CubeXをセルフで利用可能
④ソライズプロダクツ:3Dプリンターの可能性が よくわかる必見サイト
⑤ラズクリエイティブ:出力素材を開発協力 3D出力サービスの草分け
7)ものづくりの拠点作り
ファブラボ、など町の中に、自分で製作出来る拠点作りが、3Dプリンター
スキルのアップに向けて必要となる。
http://fablabjapan.org/
FabLab Japanは、私たちが住む日本にもファブラボを設立し、「つくる文化」
や「つくる技術」を広めていくことを目標に、2010年春に活動を始めた。
ファブラボとパーソナルファブリケーションの可能性を広く伝えながら、
日本におけるファブラボのあり方についての検討を行っている。
現在は、国内外のファブラボで行われる活動をつなぐ枠組みとして、
以下の3つを軸にした活動を行っている。
①国内のファブラボや関連施設の連携:共同プロジェクトの推進
②世界のファブラボとの交流:人の派遣や受け入れ
③ものづくり知識の共有と情報発信:ウェブサイトの開発/運営
8)ものづくりのプラットホーム化
日本版Quirky「Wemake」β版がオープンし、21世紀のものづくりのインフラ
を目指している。
https://www.wemake.jp/users/sign_up
その概要
①開発したい商品アイデアの実現をサポートしてくれる商品開発プラットフォーム
②2013年11月にサービスをオープン、1年後までに累計15個の商品を目指している
③個人でも企業でも参加可能
④現在投稿されているアイデアの閲覧や参加には、アカウントの作成(無料)が必要
⑤アイデアの審査・開発・試作・生産には、ものづくり等に関わる専門企業と提携
⑥Caro Designの山口英文さんや、発明主婦の松下夕夏さんなどがサポートメンバーに
含まれている
その仕組みは3つのステージに分かれている。
①Thinking stage
アイデアを投稿。ユーザーから一定の投票数を得ると、WEMAKEによる審査が行われる。
審査を通過すると、次のステージに進む事ができる。
②Making stage
ユーザーの協力(開発の協力、コメント、投票など)を得ながら、アイデアからプロト
タイプを作製していく。WEMAKEによる試作、量産設計、販路開拓が行われた後に、予約
ページにプロダクトが掲載される。
③Marketing stage
完成したプロダクトが、WEMAKEのショップをはじめとする全国の小売店で販売される。
また、アイデアがプロダクトになる過程で関わってきたユーザーには収益が
分配される。
2.将来の姿は?
3Dプリンターに関する講演の記事の抜粋から、今後の自社への取り組みを少し
考えてもらいたい。
ーー3Dプリンターの可能性にいち早く注目し、日本での普及に貢献する田中氏は、
「“つくる人”と“つかう人”との極端な分断によって大量生産・大量消費・大量
破棄が進んだ20世紀のものづくりの課題の反省から、21世紀のものづくりは変化
する」と語る。
3Dプリンターによってアイデアの“触れる化”が実現 田中氏は、企業による
大量生産⇒個人による適量生産、消費の楽しさ⇒創ることの楽しさの発見、
特定企業による排他的なプロジェクト⇒異なるバックグラウンドを持った全員
参加型のプロジェクトといった、社会や心の変化を若者が集う大学で
感じられるという。
3Dプリンターで何ができるのだろうか。その方向性として2つの説を紹介している。
1つ目は、製造業に新しい産業革命が起こるという説(メイカームーブメント)。
大規模な生産設備や作業人員は不要になり、1人で製造業に参加できるようになる。
2つ目は新しい情報文化が始まるという説(FabLab:ファブラボ)。情報の中にモノの
データが流通するネットワーク端末のひとつとして捉えることで社会構造が変化する。
3Dプリンターはアイデアや発想を獲得するためのツール さらに田中氏は、これまで試
作ツールでしかなかった3Dプリンターが2つの方向に進化しているという。その第1がAd
ditive Manufacturing(最終製品が製造できるツール)。金型が不要になるほどの品質
の高度化だ。第2がCreative Machine(家庭や学校などでアイデアを具現化する発想・
創造ツール)。これらは3Dデータでスケーラブルにつながり、ネット上でさまざまな情
報交換や共有が始まることで、ITと製造技術の融合、デザインと製造技術の融合(Soci
al fabric)が起こるという。また、ワープロソフトを介して文章を生み出すのと同様
に、ディスプレイを介して3Dプリンターと対話しアイデアや発想を獲得するためのツー
ルとして考えるべきだという。
例えばFabLabは、世界60カ国250箇所でネットワーク化された地域の市民実験工房と
して利用されている。そこでは、3Dプリンター以外にも大小のミリングマシンやレーザ
ーカッター、デジタル刺繍ミシン、3Dスキャナーなど、さまざまなデジタル工作機械が
設置され、小学生から大学の研究者まで多様な人々が出会い、新たに生まれたニーズの
可能性を形にしているという。
3Dプリンターのメリットは、1つからでも作ることができること、複雑な3次元形状を
つくることができること、データで遠隔地に送ることができることであり、コストが劇
的に下がるパーソナルファブリケーションが実現する。しかしそれには想像力を広げて
いくことが重要だ。」と言っている。ーー
田中氏の指摘は、3Dプリンターの製造メーカーや開発者からの話でも、徐々に実現
しつつある様であり、ファブラボ的な広がりも大学や企業の中で、進んでいる。
ただし、3Dプリンターが企画や設計、試作品開発等の各フェーズにおける作業の効率化
や品質向上に貢献することは間違いないが、3Dプリンターが企業のものづくりを変革
するという意味では「オープンイノベーションの中で有効に機能するテクノロジーの
ひとつ」である、と言う指摘もある。
3.関連情報サイト
3Dプリンターについて更に、興味を持っている方は、以下のサイトも参考になる。
・ファブクロス  https://fabcross.jp/
・3Dプリンター比較 http://3dprint90.com/
・3Dクラフト http://3-d-craft.com/
・MakersLove   http://makerslove.com/
・キーエンス  http://www.agilista.jp/
・プロトラブズ 射出成形サービス http://www.protolabs.co.jp/
いずれにしろ、1章の1)から8)の各活動が並行して深化していくことが、社会
全体にとっても必要なことかもしれない。



「ビジネスモデル化しつつある3Dプリンターとものづくり」
デジファブ関係者や3Dプリンター研究会などの参加から、3Dプリンター深化
の可能性を感じる昨今である。まだ、製造精度などの点で、十分な製品対応とは、
ならない点もある様であるが、医療などミクロン単位の必要性のない部位には、
更に、その用途が広まりつつある。
1.3Dプリンター概況
これまで普及してきたパーソナル3Dプリンタは、ソフトクリームを作るように
積み上げながら造形をするFDM(熱溶解積層法)という技術。これはプロトタイプ
製作には良い方法だが、「最終製品を作る」という点においては、スマホケース
やちょっとした生活雑貨、アクセサリーなどが限界であった。
しかし、SLS(粉末焼結積層造形)は、粉末素材にレーザーを当てて焼き固めて
いく方法でであり、より細かく耐久性のある最終製品にチャレンジできる技術。
この方式の3Dプリンタが、10万円代、もしくはそれを切るような低価格で発売
されるようになれば、ものづくりの世界はまた大きく変わって行く。
最近、クレディ・スイスが2016年の3Dプリンタ市場を大幅修正した。
2016年の市場予測を、1,75億ドル(約175億円)から8億ドル(約800億円)で、
約3.5倍もの大幅増加となる。3Dプリンタまわりは製品の低価格化、適用
分野の拡大、関連サービスの拡大など、その勢いは予測をはるかに超えている。
ものづくりは情報創造、ネットワーク産業になって行く。
2.3Dプリンター活用に向けて
1)自身でデータを作る
3D CADソフトや3G CADソフトといっても、無料で利用できるソフトから、数百万円
する業務用ソフトまでさまざまなソフトがあるが、パーソナル3Dプリンタで造形
するために3Dモデリングを行なうことが目的なら、高価なソフトを使う必要はない。
パーソナル3Dプリンタでは、それほど大きな物体を造形することはできないし、
複雑な機構を設計する必要もない。無料の3D CADソフトとして、最近は、オート
デスクの「123D Design」、Trimbleの「SketchUp Make」、RSコンポーネンツの
「DesignSpark Mechanical」といった、無料で利用できる3D CADソフトが充実
してきた。また、Webアプリとして動作する3D CADソフト「Tinkercad」は、
インストール作業も不要でチュートリアルも充実している。
2)共有サイトの活用
3Dデータを手に入れるもう1つの方法が、3Dデータ共有サイトを利用する方法だ。
3Dデータ共有サイトは、ユーザーが作成した3Dデータをアップロードすることで、
そのデータをダウンロードできるという仕組みを提供する。
3Dデータ共有サイトのメリットは、3D CADソフトや3D CGソフトを使いこなす
スキルがなくても、3Dデータを入手できることだ。また、3Dデータ共有サイト
からダウンロードした3Dデータを3D CADソフトや3D CGソフトに読み込ませて
自分好みにカスタマイズするということも可能となる。
代表的な3Dデータ共有サイトとして、
①「Thingiverse」は、3Dプリンタ「Replicator」シリーズで有名なMakerBotが
運営している3Dデータ共有サイトである。Thingiverseは、3Dデータ共有サイト
としては老舗のサイトであり、公開されている3Dデータは質、量ともに優れている。
「CGTrader」は、高品質な3Dデータのマーケットプレイスであり、ユーザーが
作成した3Dデータを販売することも可能だ。
②日本でも3Dデータ共有サイトがいくつかオープンしている。
「mono-logue」は、国内3Dプリンタメーカであるオープンキューブが運営している
3Dデータ共有サイトである。まだ3Dデータの数はそれほど多くないが、サイトが
日本語表記なので分かりやすい。
「DELMO」は、アドウェイズ・ラボットが運営している3Dデータ共有サイトで、
フィギュアの3Dデータに特化していることが特徴だ。実際には、フィギュア以外の
3Dデータも公開されているが、3Dデータだけでなく、その3Dデータを利用して3D
プリンタで造形した物体の写真も公開されているので、実際のイメージが掴みやすい。

3)3Dスキャナの活用
3Dスキャナにもいろいろなタイプがあるが、一般のユーザーが気軽に使えるクラスの
3Dスキャナは、精度も低く、手作業での修正が必要となる。
例えば、全身を一度にスキャンできる3Dスキャナ「bodyScan 3D」がある。
周囲の4本の支柱にプロジェクタとカメラが搭載されている。3Dプリンタで造形
するには、データ修正作業が必須。修正には熟練したスタッフでも30分以上はかかる。
2.3Dプリンター関連の新しいビジネスモデル
3Dプリンターの進化に伴い、そのビジネス化に関連して、様々な動きがある。
1)クラウドファンディングで新プリンターの提供
3次元造形機の研究・開発支援など行うボンサイラボと工作機械メーカーのSラボは、
クラウドファンディングサイト「kibidango(きびだんご)」で、BS01の購入受付
を開始した。BS01の販売価格は7万9800円から。クラウドファンディングの目標額
である200万円に達した場合、支援者に対して1月末から出荷を開始する。
個人向け小型3Dプリンタ「BS01」 BS01はオープンソースの熱溶解積層法の国産
3Dプリンタである。造形材料はPLAおよびABSであり、PLAのみのモデルと、PLA
およびABS対応のモデルの2つがある。この製品は従来の個人向け3Dプリンタよりも
小型・軽量で、10万円以下の低価格に抑えたことが特徴だ。
BS01の大きなポイントは教育分野をメインターゲットに設定しており、子どもでも
持ち運べることや、教育関係者が購入しやすい価格設定を目指したという。
本体サイズは縦、横ともに250mm、高さ270mmで重量は約5kg。
サポートについてはユーザーコミュニティーを用意し、最新の技術情報やトレンド
を共有していく。
また、クラウドファンディング「Kickstartet」で家庭用3Dプリンター「Form 1」が
購入者を募集中。「Form 1」は、小さな硬貨ほどの大きさのものもすごく精巧に
3Dプリントしてくれる。価格は、2,299ドル(約181,000円)で「Form 1」本体を
1台提供するとのこと。2億円近い資金が集まることが予想される。
2)3Dプリンターの教育分野への展開
3Dプリンタを作っているMakerbotが、全米の学校に3Dプリンタを寄付するための
クラウドファンディングキャンペーンをやっている。そのキャンペーンのタイトル
はMakerbotAcademy、まず最初の出資者、CEOのBre Pettisが個人として、会社
のあるニューヨークブルックリンのすべての公立学校にMakerbotを寄贈する、
としている。
“MakerBot Academyはでっかいプロジェクトだ。合衆国には約10万の学校があり、
そこの児童生徒全員に未来に備えてもらいたいのだ”、とPettisは書いている。
寄付はDonorsChoose.orgのこのページで受け付けている。
日本でも、教育分野への重点化を更に、強めてもらいたいもの。
3)衣料製作への活用
糸からニットの衣類を作りだすことができるオープンソースハードウェア
「OpenKnit」。
3Dプリンタで作られた部品やアルミの押出パーツ、モーター、センサー、多数の編み
針などによって構成されている。普通サイズののセーターなら約1時間程度で編めて
しまうとのこと。オープンソースということもあり、部品や組み立てマニュアルは
すぐにダウンロードでき、かかる費用は約550ユーロ(77,000円)程度。
また、編機と連携されるKniticというオープンソースソフトウェアを使って自分で衣服
をデザインしていける。OpenKnitは、データ共有サイト「do KNit yourself」も作って
いて、無料でダウンロードすることが可能になっている。
この事例からも分かるが、今後高性能な衣類の3Dプリンタが登場してくると、自分の
好きなデザインの衣料をダウンロードし、自宅もしくは、近くにある衣類の3D
プリンタや編み機で作れる。つまり、衣類におけるデータ共有のオープンプラット
フォームを作り、それを盛り上げていけたところは、現在のファッションマーケット
に大きな影響を及ぼしていく可能性がある。
4)3D出力サービスの拡大
パーソナル3Dプリンターの発売が相次ぐなか、3D出力サービスを事業化する動きが活発
になっている。利用者の作成した3Dデータを業務用3Dプリンターで出力するもので、
パーソナル機と比べて造形の精度や品質が格段に高い。ここでは、2社を紹介する。
①DMM.com
料金の安い海外の3D出力サービスを利用する人が多いのに対し、DMM.comは海外と同等
の料金を掲げて7月にサービスを開始した。受注数は予想の倍以上で、サービス開始か
ら2カ月で 1000モデルを突破した。国内に出力センターを設けており、配送も迅速であ
ることから、海外からの乗り換え組も少なくない。
約600万人の会員を擁するDMMの配送網を利用し、配送料が無料なのも魅力だ。素材は
各社がサポートしている石膏フルカラー、アクリル樹脂の他に、シルバーやチタンとい
った金属も選べる。3Dプリンターは3Dシステムズ社とEOS社の業務用モデルを計8台稼働
させている。2013年10月末には利用者が出品した3Dデータを造形物にして販売する
「クリエイターズマーケット」がスタートした。
②ソライズプロダクツ
運営会社のソライズプロダクツは、工業分野の試作技術支援や業務用3Dプリンターの販
売などを手がけるプロダクトエンジニアリングサービス会社。2010年2月に、オンライ
ン入稿による3D出力サービス「インターカルチャー」を立ち上げた。
同時に、3Dプリンターでどんなことができるのかを見せるギャラリー的な意味も込め
、3Dプリンター出力による自社開発製品のオンライン販売を開始した。インテリアや文
具、ガジェットなど多数のアイテムを販売している。
特徴は、対応する素材の多さが挙げられる。アクリルをはじめ、石膏フルカラー、ナ
イロン、ポリプロピレン、ゴ ムライクなど多数から選ぶことができる。特にウッドラ
イクは、木粉とナイロン粉末をミックスしたもので、木の風合いの造形物が作れる。自
動見積もり機能も便利だ。データをアップロードして素材と造形方向を選べば、見積金
額を表示してくれる。サイトは初心者にもわかりやすく丁寧に作られている。
なかでもフリーソフトを使っての「3Dモデリング入門」や造形物を仕上げる方法などの
記事を掲載する「語る」コーナーは必見だ。
3.モノづくりの今後
これまでの製造業は「何を作るか?」、そしてそれを「なぜ作るのか?」ということ
よりも「いかに作るか?」の方が大事であった。
しかし、今後はこの「いかに作るか?」というところにおいての答えは、ほとんどの
場合瞬時にオンライン上で可能となり、グローバルな形での対応となる。
製造業は、「何を作るか?」、そしてそれを「なぜ作るのか?」という視点で事業を
する必要がある。つまり、そのコンセプト、アイデア、そしてコンテキスト化が重要
となる。そのためには、多様な人が参加するコミュニティ、ソーシャルメディアの活用
が重要となる。
これは面白い!というアイデア看板を写真で撮ってFacebookでアップする。それに対し
て友人が気の利いたコメントを書くことで、ちょっとしたアイデアが生まれる。そんな
小さなアイデアのカケラは、どんどん生成され続けていく。
今後、あらゆるプラットフォームは、情報生成&コラボレーションプラットフォームと
なり、デジタルファブリケーションと連携をしていく。
大量生産を前提とする従来の製造業とは異なり、個人が欲しいものを、他の人の
アイデアを取り入れながら、外部リソースを使って欲しいだけ作ることができる
「ネットワーク型製造業」の出現であり、3Dプリンタ-はこうした動きのなかで
重要な役割を担うのでは。


「ファブラボ」
中小企業製造業に訪問していると長く培った職人技に驚くことが多いが、
社会はものづくりの点でも、大きく変化しつつある。
社会にある智慧やお金、技を広く集め、その多様性を活かして、新しいモデルを
創って行く動きも急激に進んでいる。
チョット前に、書いたクラウドソーシング、クラウドファンディング等がそれである。
しかし、反面、その動きを知らない人、分かっているが受け入れない人が多いことも
事実である。
数年前からファブラボと言うキーワードがメディアに登場するようになった。
3Dプリンターが注目を浴び、新しい世界を創り出すと言われているが、これらの
実現手段の汎用化、低廉化が更に進むと情報の世界でインターネットが注目を浴びた
10数年前と同様の新しい世界が現出するかもしれない。
製造業でも、多種少量化の要求が進み、従来からのビジネスモデルも
変えざるを得ない状況が徐々に進むと思われる。
1.ファブラボとは何か?
デジタルからアナログまでの多様な工作機械を備えた、実験的な市民工房のネット
ワークである。
ファブラボは、個人による自由なものづくりの可能性を広げるための実験工房である。
3Dプリンタやカッティングマシンなどの工作機械を備え、人々にデジタル・
ファブリケーション技術の利用機会を提供することで、「つくる人」と「使う人」
の極端な分断の解消を目指すとしている。
20世紀は大量生産大量消費の時代であったが、21世紀を迎えた今、パーソナル・
ファブリケーションの時代へと向かっている。子どもから専門家までが “Do It
 With Others” の精神で連携しながら、自由にものづくりをする活動が始まって
いる。ファブラボは、次世代のものづくりのインフラのようなもの。
インターネットの普及によって、誰もが自由に情報発信することができるように
なったように、ファブラボが各地に普及することで、誰もが自由にものづくりが
できるようになることが期待されている。
デジタル工作機械は急速に低価格化しており、いずれは一家に一台普及する時代が
やってくると考えられている。
「Fab」には「Fabrication(ものづくり)」と「Fabulous(素晴らしい)」という2つの
意味が込められているとのこと。ファブラボの基本的理念はFab Charter(ファブラボ
憲章)として共有されており、世界中でファブラボが急速に増える中、「ファブラボ
とは何か?」という議論は常に続けられている。その定義は徐々に変化しているが、
現時点での共通認識を要約すると以下のようなものになる。
2.ファブラボの要件
ファブラボのWebサイトには以下のような要件が記述されている。
①一般市民が利用可能であること(パブリックアクセス)
無料(もしくはお金以外の交換条件の下)で一般の人々に利用を公開する。
②ファブラボ憲章の理念に基づいて運営されていること
ファブラボ憲章をウェブサイトおよびラボに掲示し、目に触れる状態にする。
③共通の推奨機材を備えていること
機材を共通化することで、すべてのファブラボが知識やデザインを共有し、
国境を越えて協力し合えるようにする。
・ファブラボ推奨機材:http://wiki.fablab.is/wiki/Portal:Equiment
・ファブアカデミー推奨機材:http://www.fabacademy.org/diploma/
④グローバルなファブラボのネットワークに参加すること
年に一回開催される世界ファブラボ会議や、ファブアカデミー、他国の
ファブラボとの共同ワークショップなどの国際的なプロジェクトに参加し、
世界のファブラボのネットワークの一員として認知されることが求められる。
世界のファブラボの共通認識となる考え方は、世界ファブラボ会議や
オンラインなどで議論され、その情報はhttp://wiki.fablab.is/などに
まとめられている。
3.日本でのファブラボの活動
2011年、日本初のファブラボとして、FabLab Kamakura(神奈川県鎌倉市)
とFabLab Tsukuba(茨城県つくば市)がオープンし、本格的なものづくり活動が
始まった。その後FabLab Shibuya(東京都渋谷区)がオープンし、札幌、金沢、
東京など日本の各都市でもファブラボ設立に向けての検討が進められている。
現在、3ヶ所でファブラボが活動しているようであるが、クラウドファンディング
のReadyForで資金を集めているFabLabKamakuraについて少し記述する。
①FabLabKamakuraプロジェクトについて
一昔前の日本では、日用品から家に至るまで、「モノ」を自らつくる文化があり、
「つくる」ことは、「結」(ゆい)と呼ばれていた。
FabLabKamakuraは、デジタルの3次元プリンタやレーザーカッターなどのカッティング
マシンからアナログの織り機まで様々な「道具」をもっと身近に使える環境を整え、
誰もが自然に「つくる」世界を目指しているとのこと。
②ReadyForでの趣旨
今回のプロジェクトでは既存の「つくる」ための道具をもっと誰もが使えるようにする
「FabToolsプロジェクト」の第2弾、第3弾といったシリーズ展開を進めていくための研
究活動費、並びに、もっと多くの人が「つくる」未来のためのトレーニングプログラム
を実施していくための、費用を集めることを考えている。
FabLabKamakuraは現在、私費を投じて運営しており、継続的な運営が困難な状況
にあり、日本でも生まれかけているこの21世紀ものづくりの萌芽を支援して頂きたい
と思っている。
誰もが「ものつくる日本人」になるための社会をつくるプロジェクトです。
③今後の進め方
昨年、「つくりかた」を考える上で転機となる発見があった。それは、アナログの
卓上「織り機」の構造を解読していた時、「織る」という行為に辿り着くまで、
いくつもの複雑なプロセスがあることに気づいたことです。どうにか、要素だけ
を抽出し「織る」行為そのものの敷居を下げ、より多くの人が「織る」ことに
親しめるシステムから提案できないかと模索し、あみ出したのが作り手自ら
「織り機」をレーザーカッターでプリントアウトするという「FabTools」
(ファブツールズ)というやり方。
一枚のシートに道具の要素を集約させ、自分の好きな素材で「織り機」をレーザー
カッターで出力することが出来る。
道具をプリントアウトすると、必然的に「つくる」という行為が発生し、さらにデ
ータは拡大・縮小、機能の付け足しなど自在に行なうことが可能となる。
普段使用することを考えないような素材も、織る素材として扱うことができる。

個人ベースでモノ作りをすることにより、金を出せば、望む製品が入手できる
時代から、作るための道具、機械作りから始められる、と言う発想の転換は
意識の変革も醸成し、従来の製造業の役割も変えざるをえない状況となろう。
最近は、従来のプラスティック素材をベースとした3Dプリンターから金属
素材も可能とする3Dプリンターへの進化も言われつつある。
資金、ネットワークなどまだまだ、不十分な状況の様であるが、ファブラボ、
是非、次代のインフラとして拡大してもらいたいものである。

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