2017年4月27日木曜日

白山千条温泉

小松空港から車に乗って1時間。日本3大名山のひとつである霊峰白山の麓、スキー場のリフトのすぐ脇に、主人と女将と数人で切り盛りする1日2組限定の宿「うつお荘」があります。金沢市内からも車で小一時間という山麓の宿には、日本各地から食通や、名店の料理人が訪れるそう。彼らのお目当ては、山菜やきのこなどの山の味。山菜料理を看板にする宿や料理屋は数ありますが、うつお荘の何がそんなに魅力的なのでしょう。
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「採ったものをその日のうちに」とは女将さん。下処理に時間がかかるものや、季節外には塩蔵や乾燥させて貯蓄していた山菜も使うのですべてがその限りではありませんが、採れたてを味わってしまったら、もうほかでは満足できないのでしょう。
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予約人数に合わせて毎日使いきれる量だけ摘んできますが、20数年続けているのに、いまだに「これは?」という山菜やきのこに出合うことも。どう調理しよう、どんな味付けがいいだろうかと、さまざまに試みるというその熱心さが、都会では決して味わえない、プロをも引きつける〝素朴だけれど贅沢な食〟にしているのです。
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これからの季節、クズなど夏の山菜に、手取川(てどりがわ)上流の鮎や岩魚(いわな)がおいしい季節。自家農園での野菜や、ご主人が打つそばも魅力的です。3つの客室にふたつの貸し切り風呂、そしてふたつの食事処。摘草料理とゆったりした時間、そして清らかな空気で、この小さな宿での滞在は心地よく満たされるのです。

春は山菜、秋はきのこ。山川の恵みをそのままに

5月のある日の山菜。手前から、1日で香りが飛んでしまうというアイコ(ミヤマイラクサ)、山ウド、アザミ。
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シャキッとした食感と独特の甘みが特徴のアマナは、黄身酢で。
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自然薯をつなぎにしたそば。地場もののワサビは、辛みのなかに甘さが。
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大きなこごみは、黒ごまの味噌で。
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白山千丈温泉のお湯ガイド

平家の落人(おちうど)伝説が残る白山千丈温泉(河内千丈温泉から名称変更)は、肌になめらかなアルカリ性の単純温泉。お風呂はふたつあるので、客室ごとにゆっくりあたたまることができる。食事のみの場合も、温泉利用可能。
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うつお荘はここにあります!

住所/石川県白山市河内町内尾口35 地図
TEL/076-272-1392
北陸鉄道石川線「鶴来駅」より車で約20分、小松空港より車で約70分、北陸自動車道「小松IC」より約40分
※12月中旬ごろから3月までのスキーシーズンは、宿は閉めて別棟の蕎麦処「山菜庵」のみで営業。
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-2013年和樂8・9月号より-

2017年4月22日土曜日

小浜の仏像

古刹(こさつ)、秘仏というと、やはり奈良や京都をイメージしてしまいますが、最近、歴史や仏像に興味がある人たちの注目を集めているのが、福井県小浜(おばま)市。
 NHKの朝ドラ「ちりとてちん」の舞台として、また現アメリカ大統領と同じ音であることから知られた小浜は、古くから栄えた日本史の拠点でもあるのです。
 日本列島の日本海側の中央部に位置する小浜は若狭湾(わかさわん)に面し、海の幸に恵まれたことから、奈良時代以前から天皇家の食料である「御贄(みにえ)」を送る「御食国(みけつくに)」として、都の食文化を支えてきました。
 平安時代には海上交通の要衝となり、中国や朝鮮半島を京の都とつなぐ役割を担うようになり、たくさんの人や貴重なものが往来したのです。
 小浜から京へと続く街道沿いには今でも、平安時代の仏像や鎌倉時代に創建された寺院が数多く残っており、平安貴族が帰依(きえ)した天台宗や真言宗など密教との関係の深さを示す「十一面観音像」が多数あり、鎌倉時代創建の明通寺(みょうつうじ)の本堂と三重塔は国宝に指定されています。
 また、小浜市と若狭町は「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群 ~御食国若狭と鯖街道~」として、平成27年に文化庁が創設した日本遺産第1号に認定。その豊かな歴史や文化が広く知られるようになってきました。
貴重な仏像がいくつも! 若狭小浜で秘仏の特別公開が行われます
 この一帯の時代背景を伝える古刹は実に130。地域で大切に守られてきた寺院には、歴史的秘仏や美仏が数多く現存し、近年は「みほとけの里」として注目の的! 
 これら秘仏は通常非公開で拝観できないのですが、この秋の9月13日(土)~11月24日(月・祝)の期間に限って「みほとけの里 若狭の秘仏 特別公開」が行わるのです‼
 開催期間中の9月17日(土)~10月16日(日)の14日間には「秘仏めぐりバスツアー」が催行され、国宝や重要文化財に指定されている魅惑の秘仏・美仏を拝観するのがより手軽になるとあって、ますます注目が集まっています。
 この秋こそ、豊かな自然と食文化に育まれた、静謐(せいひつ)なる「みほとけの里」で、心安らぐひとときを過ごしてみませんか?
明通寺三重塔釈迦三尊坐像 明通寺
左/明通寺の国宝 三重塔。文永7年(1270)鎌倉時代中期に再建された、三間三層で檜皮葺の三重塔。総高22.26㎝。上層へ行くにしたがって寸法を減らす均衡のとれた構成で優美な姿を表した純和様の三重塔。右/初層内部には仏壇を囲む4本の柱が立ち、写真の釈迦三尊坐像と阿弥陀三尊像が安置されていて仏堂風になっている。※明通寺では平日を含む全期間9時~17時に公開(荒天時は内部の公開は中止) 明通寺
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美しい自然が残る若狭で民が守る秘仏を愛でる

みほとけの里 若狭の秘仏 特別公開

実施時期/9月17日(土)~11月30日(水) ※原則として土・日・祝日。寺院により公開日時は異なる
拝観料/寺院により異なる
開館時間 9時~17時(入館16時30分まで)

みほとけの里 ライトアップ

羽賀寺 10月8日(土)~9日(日) 
明通寺、萬徳寺 11月19日(土)~20日(日) 
神宮寺 11月22日(火)~23日(水・祝) 
※11月19日(土)・20日(日)・23日(水・祝)は、福井県立若狭歴史博物館からシャトルバスを運行
◆詳しくは福井県ホームページでご確認ください
㈬ 加茂神社 千手観音立像 011加茂神社為星寺(いせいじ)の重要文化財「木造千手観音菩薩立像」附厨子1基 
かつて加茂神社背後の山の上にあったとされ、現在は森の中に本堂だけが残る為星寺。千手観音菩薩立像本像は桧材の一木造で、頂上仏を除く像高は108.5㎝。衣文には平安初期像の特徴を表すが、浅い彫りや目鼻立ちのおだやかさなどから、11世紀初期の作と考えられる。※加茂神社為星寺では9月25日、10月2日・9日・16日の各日曜13時~16時に特別公開
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若狭――小さな秘仏と国宝に出会う旅【日本美めぐり旅】

若狭おばまの秘仏めぐりバスツアー

開催日時/2016年9月17日(土)~10月16日(日)の土・日・祝日と9月21日(水)
コース/小浜市・若狭町・若狭歴史博物館の特別公開の仏像のほか重要文化財級の仏像をめぐる全15コース・27便 ※すべて1日コース
乗降場/JR小浜駅および道の駅若狭おばま
料金/1日コース6,000円(バス代、拝観料、昼食代を含む)
◆詳しくは若狭おばま観光協会ホームページでご確認ください
13 谷田寺 千手観音立像谷田寺(たんだいじ)の重要文化財「木造千手観音立像」附木造不動明王・毘沙門天立像 2躯 
縁起によると養老5(721)年に泰澄が開いたという真言宗の寺院「谷田寺」の本尊、11面42臂の通形の千手観音立像である。制作は鎌倉時代と考えられる。像高161.2㎝ ※谷田寺では本像と不動明王・毘沙門天立像の重要文化財を「秘仏めぐりバスツアー」で公開
写真提供/若狭おばま観光協会事務局

2017年4月1日土曜日

なれずし

ごはんと魚と塩を合わせて乳酸発酵させるのが、なれずし。動物性たんぱく質を保存する先人の知恵の賜です。その代表ともいえる鮒(ふな)ずしは、滋賀県の名産。奈良時代に遡る古い歴史をもっています。
奥琵琶湖マキノ町で、鮒ずしを漬ける左嵜謙祐(ささきけんすけ)さんは230年続く「魚治(うおじ)」七代目。
「琵琶湖にしかいないニゴロブナのメスを使います。卵が若い2月から4月に獲り、うろこ、えら、内臓を取って、7月の土用まで塩漬けしたあと、塩を洗って飯漬けに。冷ましたごはんと鮒を交互に入れて木のふたを載せて重しをし、水を張ります」
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2年間熟成して出荷された鮒ずしは、さわやかな酸味と濃厚なうまみ。日本酒にもワインにもよく合い、複雑な味わいは日本の食文化の豊かさを実感させてくれます。
「県が稚鮒(ちぶな)を水田で育ててから琵琶湖に戻すようになり、ニゴロブナが増えてきたように思います」と左嵜さん。鮒と米づくりの歳時記が合うからできる、稲作地帯の保存食です。

鮒寿司 魚治

住所/滋賀県高島市マキノ町海津2304 地図
TEL/0740-28-1011
定休日/火曜日