2017年5月23日火曜日

庭園

日本庭園にはさまざまな楽しみが隠れています。盛り土や石庭を山や海に見立てたり、滝や池などの広大な自然をミニチュア化して取り込んだり。そして、なぜか心が落ち着く美で満たされているのです。
「年月がかかって重みを増して、美しさが光る。時が美しさを発揮していく」と旅行作家の兼高かおるさん。
桂離宮、古書院の月見台。
西洋の庭園がシンメトリーに植物を配置して、敷地の中で完成された人工的な美しさを求めるのに対して、日本庭園は木や石や水をできるだけ自然界にある姿で配し、ときには囲った敷地外の自然までを「借景(しゃっけい)」として取り入れます。木々は育ち、土地は苔むして、そんな経年変化を愛しむのも日本庭園ならではの味わいといえるでしょう。
桂離宮、松琴亭遠望。
日本庭園の歴史は古く、奈良の平城京跡にもS字形の池泉が発掘・復元されています。日本最古の造園本『作庭記(さくていき)』によると、平安後期には、地割や石組、植栽などの基本的な造園方法が確立。特筆すべきはその自然観で、「人間は自然に導かれながら作庭すべし」という視点でした。桂離宮、御腰掛前の二重枡形手水鉢。
鎌倉から室町時代にかけては、五山を中心にした禅寺書院の庭が発達。自然の山水を凝縮させた庭「枯山水(かれさんすい)」が多くつくられます。千利休がつくった茶庭も、日本庭園史を語る上で忘れてはいけないもの。茶の湯では、客人は細い通路である「露地」を通って茶室へと向かいますが、露地の特徴は、作為を感じさせない意識的な深山の趣。庭園表現に新境地を開きました。
桂離宮、書院に向かう飛石。
江戸時代には将軍や大名によって多くの回遊式庭園が全国につくられます。当時は個人の所有物だった庭園も、今はその多くが一般に公開されるようになりました。庭園に身を置けば、その時代の背景や作庭者の思いと通じることができます。それはなんと豊かで贅沢な時間なのでしょう。
桂離宮、新御殿の一の間。

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