2016年1月24日日曜日

「2040年の新世界」より思う。3Dプリンタが拓く世界

これからの3Dプリンタの発展とそれによる社会の変革の可能性について
描かれている。ある意味、1990年代終りにインターネットが
「空っぽの洞窟」と呼ばれた時代と同じフェーズなのかもしれない。
確かにここでも言われているように、3Dプリンタはまだまだ幼児期の
レベルなのであろう。しかし、それでも手作り行為をビジネスとして進化
させているのも事実である。
1.3Dプリンタが持つ「10の特質」
3Dプリンタが革命を起こし得る「10の特質」を紹介している。これは複数メーカー
への調査やインタビューからまとめられた。
①無限に複雑なものが作れる
②無限のバラエティ
③組み立てがいらない
④リードタイムが0
⑤デザインの幅が無限
⑥技能がなくても製造できる
⑦コンパクトでポータブルな製造設備
⑧ゴミになる副産物が少ない
⑨素材を無限に混ぜられる
⑩物理的な複製が正確
・複雑なパーツを容易に作ることができる
3Dプリンタは、素材を付加しながらモノを製造できる「Additive Manufacturing
(付加製造)」を生み出した。切削が主流だった製造業界において、これは大きな革命
である。この製造法の誕生により「単純なパーツを作る時間と同じ時間でより複雑な
パーツの製造が可能になった」と説明している。
・バラエティ豊かなパーツを量産でき、組み立てが不要
バラエティ豊かな形状を一度に作ることができ、組み立てにまつわる多くのコストも
不要になると説明している。
・異なる形状も一度に製造できる。
このため、リードタイムが劇的に削減、形状の制約もゼロになる。
さらに、デザイン終了から生産開始までの時間が“ほぼゼロ”になったことを
挙げ、今まででは困難だった空間的なデザインが可能になったと説明している。
その他にも、製造のスキルが不要になったこと、装置が小型であること、材料のムダが
減ったこと、材料のブレンドができること、再現性があることなどを原則として紹介。
まだまだ扱える素材や造形可能な大きさに限度はあるものの、この3Dプリンティ
ングがもたらす波及度はかなり大きい。
しかし、この特質を活かし、本格的な拡大には、キラーアプリの必要性も
重要である。
「キラーアプリがないせいで、一般消費者や中小企業は、3Dプリンタを家庭や
オフィスで使うために購入する必要性をまだ感じていない。3Dプリンティング
の市場は、いまだ製造業とデザイン業界にとどまっている。3Dプリンタとそれによる
サービスの世界市場の総額をピンポン玉の大きさとすれば、家庭用3Dプリンタ
とそれによるサービスの世界市場の総額はさらに小さく、米粒ぐらいのサイズ
にすぎない」と言う。
さらには、3Dプリンティングの発展についての課題も述べている。
・顧客の問題を解決するには、用途のニーズに注目する必要がある。「より速く、
より性能の高いマシン作ろう」でいう話ではなく、「今存在するこの問題を真の意味で
解決するマシンを作ろう」という意識。
・消費者は3Dプリンタで作ったすてきな商品に高い金を払いたがるものの、多くの
消費者は、自分でマシンを所有したり動かしたりしてそうした製品を作ろうとはしない
だろう。アマゾンやシェイプウェイは残っていく。
・テクノロジーの革新は、一般の人々が新しいツールを手に入れ、それを日常生活に利
用するときに起きる。
・経験経済では、採算性の高い、成功を収める企業は、顧客に経験や変身をもたらす製
品や商品を売る企業となる。経験も、変身した感覚も、どうしても記憶に残る。消費者
はそういうものにふつうより高い金を払い、リピーターになる。
3Dプリンティングは、工業部品や玩具、雑貨といったものを造形するイメージが強
いかもしれないが、本書では「生体インク」を使い、人の臓器や血管等まで造形して
しまうバイオプリンティングや必要な栄養素を組み合わせて加工食品ならぬ合成食品を
製造してしまうフードプリンティングの事例が紹介されている。
単なる工業製品にとどまらず、我々の生死に係わる領域にまで影響を及ぼす可能性を
様々な分野で述べている。
3Dプリンティングは私たちの世界をどう変えていくのか。以下のようなことが
起こる可能性についても、
・大量生産をどう変えるか?
・人類の雇用を奪うのか、創るのか?
「究極のカスタマイズ臓器」を創れるか?
・学校に3Dプリンタが来たら、教室はどう変わるか?
・武器や違法ドラッグが3Dプリントできたら?
よく言われているのが、3Dプリンタの方向性としての2つの説である。
1つ目は、製造業に新しい産業革命が起こるという説(メイカームーブメント)。
大規模な生産設備や作業人員は不要になり、1人で製造業に参加できるようになる。
2つ目は新しい情報文化が始まるという説(FabLab:ファブラボ)。情報の中にモノの
データが流通するネットワーク端末のひとつとして捉えることで社会構造が変化する。
例えばFabLabは、世界60カ国250箇所でネットワーク化された地域の市民実験工房と
して利用されている。そこでは、3Dプリンタ以外にも大小のミリングマシンや
レーザーカッター、デジタル刺繍ミシン、3Dスキャナーなど、さまざまなデジタル
工作機械が設置され、小学生から大学の研究者まで多様な人々が出会い、新たに
生まれたニーズの可能性を形にしているという。
ファブラボについての紹介がある。
データとモノの直接のつながりを強める生活基盤への浸透としては、重要となる。
https://www.youtube.com/watch?v=YTwt7ji3EgY
広がり続ける市場、ミクロ/マクロ用3Dプリンタも登場して、更に本格的な
拡大が始まる。
3Dプリンタの隆盛は2005年ごろからであり、オープンソース3Dプリンタである
「RepRap」などの広がりによって始まった。従来は10万米ドル単位でしか手に
入れることができなかったが、2009年にはMakerBot社(2013年にStratasysが買収)
が個人向け3Dプリンタの販売を開始。低価格で簡単に試作品やモノづくりができる
として注目を浴びることとなった。「今や、3Dプリンタの世界売り上げは大きく
飛躍している」。また、近年では素材の多様化が進み、ミクロ・マクロ単位で
出力できる3Dプリンタの登場、バイオメトリクス分野への研究も進むなど、
業種を問わず活用できる素地が整いつつある。
例えば、ウィーン工科大学開発のナノ単位で出力できる3Dプリンタの出力、
バイオメトリクスの分野でも研究が進んでいる。
最近は、低価格でもかなりの性能を持つ3Dプリンタも多く現れている。
3Dプリンタの発展はようやく第1段階を終え、第2段階に入ろうとしている。
それは「3Dプリンタで“素材自体”を作る」という段階という。
「基礎素材を組み合わせて、新しい材料を3Dプリンタ自身が作るという段階が既に
始まっている。パソコンなどで設計できるかではなく、生物学の分野と同じよう
に素材構成を自由に組み替え、自然と同じものが作れるようになる。
さらには「動くモノや電気機器も全て3Dプリンタで作れるようになる」と言われ、
既に電気回路を含むスピーカーの製作可能となっている。また、Stratasysが
推進している、最終製品を直接3Dプリンタで製造する「DDM(Direct Digital
 Manufacturing)」の広がりは先進的な製造会社でも実際に一部製品で始めている。
インターネットの拡大も、通信コストが下がった時に爆発的な革命が起きた様に、
3Dプリンタは複雑なものを作るコストが劇的に下がる仕組みであり、新しい
革命が起こる、と言っている。
この本でのポイントから色々な変化が感じられる。
・蒸気機関や電信に匹敵する革新的技術
・ほとんどなんでも作れるマシン(前回の10の特質を持つ)である
・ビジネスと雇用はこの機械によってどう変わるか?
大量生産の変化、雇用の変化
・3Dプリントの技術が高める経験経済の拡大
・生体インクでバイオプリンティングを行う
・食のデジタルフードプリンティングの実現性
・グリーンでクリーンなものづくりの出現
・学校教育での3Dプリンタの果たす役割
・武器製造、違法ドラッグの製造が可能となる
まずは、経験経済の拡大がある。
消費者は3Dプリンタで作ったすてきな商品に高い金を払いたがるものの、大半の消費
者は、自分でマシンを所有したり動かしたりしてそうした製品を作ろうとはしないだろ
う。そのため、経験経済では、採算性の高い成功を収める企業は、顧客に経験や変身を
もたらす製品や商品を売る企業となる。経験も、変身した感覚も、どうしても記憶
に残る。消費者はそういうものにふつうより高い金を払い、リピーターになる。
例えば、現在も拡大しているマーケットプレイスがある。ここでは、CADの知識が
ない人でも簡単にデータを作成することが出来るようになっている。
シェイプウェイズには1万以上のショップがあり、毎月約6万点の新しい3Dデータ
が投稿されている。マーケットプレイスとしては、基本的に二つのパターンに
分かれる。
一つはShapewaysのように多数の3DCADデザイナーたちを集めたサイトで、
様々なデザインやいろいろな種類の製品が並んでいる。もう一つは、特定分野
の商品に特化して販売しているサイトである。
特定分野に特化している場合、1人ないしは数人のデザイナーが職人レベルに
仕上げて商品を提供しているのが特長となる。
また、生活情報誌が個々の休日に合った料理のレシピを載せるように、メイカー
ボットのブログはプリントのデザインや情報を載せて、アメリカ国内の読者が
メモリアル・デーやクリスマス、独立記念日を祝ったり悼んだりできるよう
にしている。
さらに、3Dプリンタの利点はただ必要なものをプリントするだけでない。
製品を販売する際に、どのような形状が売れやすいかを調べるため様々な形の製品
をプリントして、顧客にどの形なら買ってみたいか訊いてみるなどといったことも
できるようになるし、一体型でプリントすることができる利点を活かして組立て
や輸送費用といったコストをカットすることも可能となる。
3Dプリンタ技術の進歩は人々の生活をより良いものにするだろう。
新たなる食のデジタルフードの拡大の時代でもある。
多くの人の考えとは裏腹に、加工食品は、現代人が健康に長生きし、余暇を楽しめる
大きな要因となっている。工業化された食品は、人間の幸福を大いに高めてきた。
これを活用していく必要がある。
デジタルグルメとして、既にそのコンセプトが出来ている。
「コルヌコピア」は、「デジタルショコラティエ」「デジタルファブリケーター」
「ロボティックシェフ」「ヴィルトゥオーソミキサー」という四つのプロトタイプ
からなるデザインコンセプトである。このプロトタイプはまだ実用になっていないが、
素材を物理的、化学的に変えて新しい化合物にするという新たなる調理方法を提供し、
将来的には作られたものを美しく、美味しい食感にまでする、と言う。
フードプリンタについては、実際に食品をプリントしようとすると、いくつもの課題
が挙げられるが、加工食品としての課題を解決する必要がある。そのためには、
食品データの信頼性の確保が重要となる。食事をプリントするために必要なデータは、
現状ではクッキーなどのような単純な物が多い。だが実際に不特定多数の一般家庭の
人が食べるものとなると、安全性は勿論だが、複雑な形状に加えて栄養も考えられた
ものでなくてはならない。家庭にフードプリンタが広まるまでの時間、食品デー
タを作ることの可能な人間の育成、様々な法的整備も必要となる。
しかし、これは新しい原材料の組み合わせを可能とし、フードプリンティングにより
栄養価が高く、安くて新鮮で美味しい新世代の加工食品をもたらす可能性を高める。

この本でのポイントから色々な変化が感じられる。
・蒸気機関や電信に匹敵する革新的技術
・ほとんどなんでも作れるマシン(前回の10の特質を持つ)である
・ビジネスと雇用はこの機械によってどう変わるか?
大量生産の変化、雇用の変化
・3Dプリントの技術が高める経験経済の拡大
・生体インクでバイオプリンティングを行う
・食のデジタルフードプリンティングの実現性
・グリーンでクリーンなものづくりの出現
・学校教育での3Dプリンタの果たす役割
・武器製造、違法ドラッグの製造が可能となる
バイオプリンティングもその大きな期待が高まっている。
バイオプリンティング は、特殊な形式のコンピュータ制御による3D印刷。この印刷
では、事前に定めたパターンでプラスチックまたは金属の層を積み上げてから各層を
融合させてるが、バイオプリンティングでは、ビーズ状の生きた細胞の
「バイオ・インク」の層と、結合ジェルの層を交互に重ねる。細胞は、それが万能
の幹細胞であるか、特定目的のために選ばれた成体幹細胞であるかを問わず、
人体内で果たすのと同じ機能を実行するよう自身を組織化していく。
3Dバイオプリンティング は、富山大学の中村教授がインクジェットプリンターに
よって紙に置かれる小さなインクの液滴のサイズが、生体細胞のサイズとほぼ同じで
あることに気付き、最初の3Dバイオ・プリンターを2006年に製作した。
「われわれは、種類が異なる細胞を使用して3D構造を製作できることを実証
しました。血管の構造を模して、内側は血管内皮細胞、外側は平滑筋細胞という異なる
種類の細胞で2層の管を作ることに成功したのです」と中村教授は語る。
他にも、世界でこの分野での様々な動きが活発化している。
サンディエゴ市のある研究室では、肝臓組織の小片がヒトの完全な肝臓とまったく同様
に、40日を超える期間にわたってタンパク質、酵素、コレステロールを作り出し続けて
いる。しかし、大きさ3mm2、厚さ0.5mmにすぎないこの組織は、ヒトの肝臓からのもの
ではない。特殊な3Dプリンターで「製造された」もので、生体組織工学の大きな
進化でもある。
さらに、イギリス、フランス、ドイツ、日本の研究者たちが様々な特殊なコンピュータ
テクノロジーを導入し、皮膚、膀胱、骨、歯などを含むヒトの器官の製造を完全なもの
に近づけようとしている。
これが上手く行けば、完全な器官として機能する肝臓、腎臓、心臓などを作成する
ことで、この研究が成功すれば、毎年数千人の命が救われることになる。
また、米国ニューヨーク市にあるコロンビア大学の科学者たちは、
バイオプリンティングによる歯と関節の作成に取り組んでいる。これらには栄養が
不要なため、組織の維持がより容易なはずで、コロンビア大学のチームは、ラットの
あごの骨に3Dプリンティングによる土台でできた歯を埋め込み、2ヵ月以内に
インプラントによって歯根膜の成長と新しい骨の形成が促された。
さらに、ウサギに対するバイオ・プリンティングによる寛骨の移植も実施され、
そのウサギは数週間以内に新しい関節を使って歩き始めた、という。
多くの関係者は「満たされていないニーズにより実り多い領域が多数あります。それは
特に、医薬品分野で顕著です。厚みがあり複雑な組織の実現にはもっと時間がかかり
ますが、組織を3Dで見たときの最小の厚さがミリ単位であれば、早期に実現可能
となるでしょう。我々はそうした組織を5年以内に人に対する臨床試験に投入すること
を目標としています。」という。
先ほどの中村教授は、機械工学的に生きた細胞と生体を構成する材料を適切に配置
して立体細胞組織構造体を作り上げるアプローチを始めた。この手法を中村教授らは
「バイオファブリケーション(biofabrication)」と呼んでいる。
中村教授はまず、「細胞を一つ一つ積み重ねていくためには、細胞を一つ一つつまむ
技術が必要」と考え、細胞操作用のマイクロマニュピレーター(光学顕微鏡で見ながら
細かな作業を行う装置)の開発に取り組んだ。
しかし、1立方センチの組織を作るには、1億~10億の細胞が必要であり、「とんで
もなく高速に細胞を並べる」必要があった。
しかし、インクジェットの高度な技術は、「インクドットの大きさは細胞一個に匹敵
するサイズで、しかも莫大な数のドットが全て厳密に、位置、色、密度、配合を
コンピュータで制御されて打たれている」までになっていた。
その後の試行錯誤の中で、プリンターメーカーの協力を得て、細胞の大きさに合った
研究用のインクジェットのヘッドを使って細胞を打ち出してみると、細胞は生きたまま
打ち出せ、増殖にも影響がないことが確認できたという。
しかし、乾燥すると細胞は死んでしまうことから、細胞を乾燥から守るためにインク
材料としてアルギン酸ナトリウム溶液を用い、受け側には塩化カルシウム溶液を
用いて、打ち出した細胞をゲルで固める工夫を加えた。これにより、打ち出された
細胞は、生きたままゲルに包み込まれ、ビーズのようになる。さらに、ラインを
引くと滲むまずにゲルの繊維となり、立体交差もできることが確認できた、という。
今後の課題としては、装置の改良とともに、細胞を受け止めるゲル材料の改良および
新材料の開発が挙げられる。現在使っているアルギン酸ゲルは、造形のしやすさでは優
れているが、ゲルの中で細胞が育ちにくいという問題がある。血液が固まる性質を利用
したフィブリンゲルでも作ってみたが、細胞の育ちやすさの点ではアルギン酸ゲルより
優れている一方、強度が非常に弱く形を維持することが難しかった。造形と細胞の成長
・組織形成を両立することが課題という。
有名大学や企業の研究室、生体工学者など、現在約12の機関が「コンピュータ適応型
生産(computerized adaptive manufacturing)」と呼ばれる人体組織複製の研究に
取り組んでいる。
コーネル大学では、心臓弁や膝の軟骨、インプラント用の骨、ウェイク・フォレスト大
学では腎臓の細胞をプリントしているほか、やけどや傷の治療で患部に皮膚組織を直接
付着させられる携帯機器の開発に取り組むチームもある。
さらに、私たちの動脈や静脈などの血管は、内側の層に血管内皮細胞を持った多重
チューブ構造をしているが、そこでインクジェットの2色インクを使って、生きた細胞
を配置した二重構造のゲルチューブを作製することに成功した。
また、カリフォルニア州サンディエゴにある会社Organovoの研究者たちは、
3Dプリンタを使って史上初めて人間の肝臓の小さなレプリカ製造に成功した。
BtoI、個人(Individual)への対応が更なる可能性を高める。
医療やファッションや食品など、日本での製造関係とは違った異業種が
注目されている。
医療関係はまだ発展途上であるが、今までの記述のようにその可能性は高まっている。
まず、BtoIへの流れを感じたきっかけというのはファッション業界との取り組み
が大きい。自分たちで流行を作って、在庫見込を計算して9号や10号など規定
サイズで生産するわけだが、必ず見こみ違いの在庫不良が出るので、それをセール
で売りつくすことになるというのが昔からの課題。この当たり前とされてきた
サイクルを、当たり前ではないのではないかと気付きはじめている人たちがいて、
それを解決するのはやっぱりBtoIという考え方ではないかと考えている。
つまり、規定のサイズを作り置きするのではなく、需要に応じて作れるシステムと
プロセスというのを完成すればいいじゃないかと考えている。型紙の代わりに人体
データがあれば、1本の糸から紡いでワンピースとかカットソーを作るぐらいの
技術力を持った企業もある中で、決して遠い話ではない。医療もやや時間がかかる
かもしれないが、これからは、消費者という一括りにした対象ではなく、
BtoI、個人(Individual)としてより細分化したニーズや個性に応えてゆく必要
があるし、それができる形に移っていくと考えられている。
それがフードプリンティングであり、バイオプリンティングの世界である。
3D技術の進化は多いに期待できるが、この本でも、その教育現場での3Dプリンタ
の活用に注目している。日本政府も「世界最高水準のIT社会の実現」に向け、
IT教育推進ツールのひとつとして3Dプリンタの導入支援について言及するなど、
教育ICTのツールとして認識されてきた。最近は、比較的コンパクトで求めやすい
価格のプリンタも登場したことから、具体的で効果的な教育現場での利用方法が
更に強く求められている。
3Dプリンタは、米国のオバマ大統領も注目しており、STEM教育(科学・工学・
エンジニア・数学)のさらなる向上ために約1,000校に導入するという。
日本国内でも、児童生徒のデザインやプログラミング能力の向上だけでなく、子ども
たちを積極的に授業に参加させるツールだと注目されている。
従来は、紙や画像でしか見ることのできなかったものを具現化することで、子どもに
とってより理解しやすくなり、学習意欲の維持と向上につながることがメリットの
ひとつであり、平面図、立面図、断面図など2次元ではイメージが難しい図形でも、
3Dプリンタで印刷することによって、手にとって実際に触ることができる
ようになる。
さらには、3Dプリンタを利用するに当たり必須となる3DデータをWebサイトで無料
提供しているところもあるという。しかし、独自で考えたデザインを印刷するためには
3DCADや3DCGといった専門的なソフトウェアを用いたデータ作成が必要と
なるため、自在な活用には課題が残るが、3Dプリンタは大学での建築物のモデルや
立体地図の印刷、製品デザインのサンプルの印刷など、幅広い研究分野ですでに活用
されており、今後手軽さが増すにつれてさらに多くの大学・研究分野への普及が
期待される。また、小中学校や高等学校、一般家庭に普及することで図画工作や美術
の授業での活用や子どもがブロックを組み立てるように思い描いたものを3Dで印刷
するなど、ものづくりへの好奇心をかきたてる高度な知育玩具としての効果も期待
されている。
この本では、アメリカの実情を中心に書いてあることもあり、先ほどのSTEM教育
についてもその将来性に言及している。しかし、国内では、平成25年6月14 日
に閣議決定された世界最先端 IT国家創造宣言で、「新しいモノづくりである
デジタル・ファブリック(3Dプリンタ等)やロボッティックス、プログラミング、
情報セキュリティ、コンテンツ作成等、学生等が将来を展望した技術を習得できる
環境整備を教育環境の IT 化とともに進める。」と明記している。
また経済産業省は 3Dプリンタを学生が使えるように導入する教育機関に対して、
購入費の 3 分の 2 を補助する事を発表した。夏ごろにまずは大学や高専から数校
選定し、実施し、来年には全国の中学高校まで対象を広げる、という。
これらより教育現場における 3Dプリンタの導入が進むと予測される。
しかし、3Dプリンタは出力装置であり、3Dデータが存在して初めて意味の
ある機器となる。
メディアでは、3Dプリンタが注目されているが,有効活用のために必要不可欠な
3Dデータについての整備が追い付いていないのが現状である。特に教育現場で
使用する事を想定した3Dデータはほとんど存在しない。3Dデータ自体は
コンピュータ上で視点移動・回転が自由に出来るため、必ずしも3Dプリンタで
出力する必要が無い。
また、3Dプリンタは全ての形状のものを出力できる訳ではなく、不向きな形状
もあるため、万能ではない。
重要なことは3Dデータの活用であり、3Dプリンタの導入ではない。
1)3Dデータの利用とその指導
現在の教育現場で用いられている紙媒体の教科書では、3Dの表記が難しく別途
教材として、模型等を利用している。しかし、定型,既成の物は用意できるが、
教師の意図通りの模型を全て用意する事は困難である。算数の立体、理科の
分子モデル、社会の地形等、様々な教科で3Dが有効な場面があるが、2Dの
情報から3Dへの頭の中での展開は、全ての生徒が得意とするものではない。
そのため、理解度を上げていくためにも3Dでの指導が望ましい。
2)数学での利用
小学校の算数で立体を学ぶが、この時点で空間認識能力による理解の差がついている
可能性がある。現状では模型を使うことが多いが、一つか二つ程度の模型を生徒全体で
共有する事が多く、生徒全員がじっくり模型に触れながら理解する環境にない。
例えば、正二十面体をコンピュータで表示した場合には、全ての方向に回転して確認
する事が出来るため、紙媒体では得られなかった全方向からの理解をすることが
出来る。
3)理科での利用
理科では、微小なものに対しての拡大物として利用する事で理解を深めることができる
と期待できる。微小なものは顕微鏡等での拡大写真で学習しても一方向からの
視点でしか見られないため、3Dデータで任意の倍率や視点から構造を確認する事で
理解度が上がると考えられる。
DNAのらせん構造や細胞の構成等、その利用範囲は広い。
4)社会での利用
社会では地形の学習での利用が考えられる。盆地、平地、河岸段丘のように実際の
地形の高低差を示すことにより理解度が上がると考えられる。
地形の場合では、実際に現地に行ったとしても平野、盆地等、視界の範囲内で全てを
見渡せない事も多く、理解できない事が多い。しかし、3Dデータでは拡大縮小
だけではなく高低差の倍率も変更できるため、地形を立体として認識しやすくなる。
3Dプリンタ教育の事例
1)Fab Schoolについて
「ファブ・アカデミー」は、各種工作機械の使い方を覚えながら、自由にものづくりが
できるようになるための講座で、世界各地のファブラボをビデオ会議システムで結ぶ遠
隔講義カリキュラムとして提供されている。月2回のペースで授業と作品講評が
行われ、半年のカリキュラムを修了した人には認定証が渡される。
このカリキュラムは、MITにおける人気講座「(ほぼ)あらゆるものをつくる方法 (How
To Make Almost Anything)」が原型となり、それが拡張されて多地点同時中継方式
となったもの。この講座を修了した人は、自分で「ファブラボ」を切り盛りするための
十分な技量を持っていることが保障されたという意味も持つ。
また、日本では2011年10月より東京藝術大学・芸術情報センターの公開講座
として「Fab School Tokyo 2011」が開講された。幅広いバックグラウンドを持つ
市民が参加して各種ツールに触れながら、自由なものづくりを体験した。
例えば、製造プログラムの目標の基礎は、金属加工や溶接の分野での雇用のために
必要な職業訓練を学生に提供する。学習への実践的なアプローチを採用しながら、
カリキュラムが加速され、学生は、わずか7ヶ月でプログラムを完了すること
ができる。
2)創造空間ナノラボについて
創造空間ナノラボは2011年から株式会社インフォコアの秋葉原事業所を一般の
人たちに開放した工房。代表の杉山さんは、ナノラボをつくった理由をあっさり
「CSR(corporate social responsibility)社会貢献のようなものです」と言われる。
会社組織なので、ある程度収益は考えられているそうですが、「あまり儲かる事業
じゃない」と言わる。儲からなくてもナノラボを運営されるのは、いくつかある
理由の中で、この本でも指摘する言葉がある。
その一 夢に向かう忍耐力がつくから
「ものつくるには、忍耐がいります。何をつくるにも、夢や目標が必要です。夢や目標
に向かって、ばらばらで、あちこちに散らばっているものを、かきあつめ、色々工夫し
ながら、つくりあげていきます。つくるには忍耐力が必要です」と杉山さん。
誰かがつくってくれたものを、消費するだけの人生を歩みますか? それとも、夢に向
かって何かをつくりますか? と聞かれた気持ちがしました。つくり、創造し、夢に向
かった生き方の方が、素敵ではありませんか?
その二 怒りを「創造」に昇華できるから
「僕の場合は怒りからものづくりが始まっていますね」
「これが、したいけど、できない。なんでなの? あ~何々~がないからだ!!
誰かつくってくれないかな? でも自分と同じものがほしいと思っている人は他に誰も
いない。それなら自分がやらないとどうにもならない。
最後に自分で作ってしまえば、実はそれが必要だった人たちが集まってきて笑顔になる
んです。最初は自分の怒りだったものが、みんなの笑顔に変わるんです。」
その三 単に楽しいから
「ナノラボは楽しく遊びながら技術が身に付くといいね。というコンセプトでやってい
ます」とのこと。
ものづくりは楽しいのです。ナノラボは、楽しい場所なのです。大企業へ、外国へ行っ
てしまったものづくり。3Dプリンターを使ったり、電子工作で初めてみたら、毎日が
もっと楽しくなるに違いありません。
「ナノラボは、気軽にものづくりが、世代関係なくできる場所にしようと始めました。
プロフェッショナルな人のためのものづくりを支援する場所は、産業技術研究センター
があります。でも、一般の人が身軽にものづくりを始める場所が必要だと思った。
環境がなければ始められません。だからナノラボをつくったのです」と杉山さん。
「それから、ものづくりは、子どもの情操教育にとてもよい影響をあたえます。ゲーム
は、破壊したり、殺したりが多いですが、子どもに必要なのは『つくる』ほうです。そ
こで、昨年の秋からさらにもう一つ付属施設として開設したのが、ナノラボトレーニン
グセンター(略称NLTC、http://nano-pro.jp/school/)です。」
AMラジオのパーツを、秋葉原で買って組み立てるラジオ少年だった杉山さん。子どもの
頃のものづくりの原体験が、振り返れば重要だったそうです。
ナノラボではトレーニングセンターが併設されていて、日本の次世代を担う小学生4年
生から中学生向けの、電子工学のコアテクノロジーが学べるジュニアスクール「ロボッ
エンジニアコース」と「ITエンジニアコース」があります。
大人向けでは、エキスパート養成講座に、「3Dプリンターコース」「レーザー加工機
講習」「ソフトウェア講習」があり、大人でも、やる気があれば、日本のものづくりを
支える、メーカーを目指す環境があるのです。
これからは、幅広い人たちの関わりが3Dプリンタをより社会の中で進化させ、この本
でも言っている「社会革命」となる。このためには、教育が重要であるが、国の意識は
モノづくりへの意識が強いように思える。

「3Dプリンタが拓く、光と影」

今までの記事では、技術の進化に伴い、我々が技術の恩恵を如何に受けるか、
であった。
本書では、こんなことも言っている。 
・3Dプリンタは、いつか究極のFAX機になる
・人口のミニ臓器は、経験の浅い外科医の訓練に役立つ
・市販されている主なプリンタのひとつであるメイカーボット社のレプリケーターは、
「フロストルーダー(Frostruder)」という追加部品を取り付けてフードプリンタにす
ることができる 等。これらは前回までに色々と書いてきた。
しかし、高度な形をスキャンすることの大変さ、知的財産権の問題、ドラッグや武器
の複製問題など、3Dプリンティングの課題、問題についても書いている。
技術の進化には、光と闇の部分が必ず並存する。
本書は大きく3つの内容に分類できる。一つは1章から6章までは3Dプリンタの経済
への影響や、機械的な仕組み、デザインソフトといった「3Dプリンティングの仕組み
とこれから」について述べられている。二つ目は7章から10章まででフードプリンタ
や医療、教育、アートに関して「3Dプリンタによって可能となること」について
述べられている。過去の記事では、これらを書いてきた。
三つ目は11章から14章までで、環境問題、知的財産権そして技術の発展で可能に
なることなど、「将来3Dプリンティングがもたらす期待と不安」について
述べられている。
今回はその複製問題や知的財産などの不安な点について述べていく。
環境問題、特許などの知的財産権、薬物や武器の複製問題(12章)などの3D
プリンティングの課題について考えることが重要である。
1)複製問題の事例より
昨今話題となったのが、拳銃の自作である。
アメリカを中心にそのような報告が多いが、日本でも最近3Dプリンタを用いて
拳銃を製作していたとして、湘南工科大学職員が神奈川県警に逮捕された。彼は、
ガンマニアであり、インターネットを通じて海外サイトから設計図をダウンロード
したとみられる。
「銃器の自作」以外にも様々なものが指摘されている。
・高度なスキミング装置の量産化
3DプリンタとCADシステムを用いることにより、カード情報を盗み出す高度な
スキミング装置が、簡単に量産できるようになる可能性があるという。
オーストラリアでは、3Dプリンタで作られたスキミング装置がATMに仕掛けられると
いう事件も発生し、逮捕者が出ている。
・高度な防犯鍵の複製
米国シュレイジ社が開発した、高い防犯性能を誇る鍵「プリマス」。
高度な技術によって生産され、政府期間や拘置所でも利用されており、「複製する
ことは不可能」とメーカーは自信を持っていたが、マサチューセッツ工科大学(MIT)
の学生たちが、3Dプリンタを用いてその鍵の複製に成功した。
MITの学生たちは、独自に開発したソフトウェアと、高出力3Dプリンターサービスを
利用して複製に成功したと報じられている。しかもナイロン素材であれば、
かかった費用はわずか500円程度だったという。
・武器の複製
CNNニュースによると、米国防総省は正規に製造された軍事機器の部品が偽造される
危険が増していると懸念している。3Dプリンターは墜落した小型無人飛行機、
ヘリコプター、飛行機などの部品断片も容易に複製可能だ。このため、米国の軍事技術
を他国が複製する危惧がある。米テキサス州オースティンを拠点にする
「ディフェンス・ディストリビュート」はインターネットを媒体にした武器の開発と
情報提供を目指す団体だが、同団体により製造されたプラスチック製銃が
最近、公表された。
3Dプリンタで製作した銃を実際に発射して見せる動画が公開された。
前例を超える技術規制を米議会が行動を起こすのは待っていられないと、一部議員の
中には3Dプリンタによる銃器に対して法律規制を求める活動を始めている者もいる。
・薬やドラッグの製造
スコットランドのグラスゴー大学の化学者であるクローニン氏は、明るい色彩の
プラスチック製玩具やハニカム構造のブレスレット以外にも3Dプリンタの
可能性を予見している。彼は同僚と共に英国の化学雑誌「ネイチャー・ケミストリー」
で「ケムピュータ」(Chemputer)に関する論文を発表した。
「ケムピュータ」(Chemputer)とは、自在に化学素材を組み合わせて成型してくれる
3Dプリンタのことだ。新薬を迅速にプリントできる可能性があるという。
個人のDNA配列に合わせて、新薬が3Dプリンタにより製造可能になる
かもしれない。
しかしオンデマンド方式での薬の生成技術は、娯楽用ドラッグがプリントアウト
される可能性もある。コカイン生成の化学式は公開されている。また、塩素ガス生成
の化学式も公開されている。小さな組織でも今後、洗練された生物または化学兵器を
作成する可能性は高い」と語っている。また、彼は、3Dプリンタ銃に厳しい規制を
呼びかけている。
・3Dプリンタ規制への動き
一部では、3Dプリンタの登録について米国商務省と防衛部門で現在議論が行われて
いると述べた。だがオンライン上で既に事態は発生しているとして、デジタルの精霊
をビンの中に閉じ込めておくことは事実上不可能だと指摘した。
米国は必要な規制を実施することができるだろうが、業界はグローバルな展開を
見せている。 「3Dプリンタを規制するために、全体像を概念化することは非常に
困難である。数十年にもわたり射出形成や印刷用染料を使用してきたが、製造プロセス
にかかわる人すべてを規制することは不可能だ」と法律事務所の知的財産弁護士らは、
述べているという。「どれほど3Dプリンタは危険なのか? 本当に新しい法律制定
は必要なのか? 生物テロに使用された炭疽菌、爆弾、中枢神経系興奮薬メタン
フェタミン(などが一括して容易にプリントされる日が来るかもしれない。」と
言われている。」また、「3Dプリンタには未解決な法的問題がいくつもある。
中でも大きな問題は、誰かが3Dプリンタ銃で第三者を撃った場合、あるいは化学
兵器をコピーした場合、元々の製造者は責任を負うのかというものだ。製造方法の
「性質」が問題に大きく関与してくる。 確かなことは、もう後戻りできないという
ことだ。3Dプリントしたパーツから作った銃で、実際に武装可能だからだ」。

2)著作権、知的所有権の問題
3Dプリント市場は今後10年間で成長の一途をたどる。昨年以降、各調査会社や
金融機関が市場の見通しを発表しているが、3Dプリンタは世界規模でますます
拡大していく。その一方で3Dプリンタの普及が進めば進むほど課題となるのが
著作権、知的所有権の問題だ。
3Dデータから直接物体生成できるという特性上、極端な言い方をすれば、一つの
データで何度でも同じ物体を製造することが可能だ。
不正にコピーされた商品のデータを使って大量に生産し、販売するということも
当然起こりうるとされている。そのような懸念があるなか、大手IT系調査会社の
ガートナーは3Dプリンタが拡大することの被害総額を予測している。
著作権侵害によるその被害総額はグローバル規模で見た場合、2018年度には
1000億ドル、約10兆円に達すると予測している。
3Dプリンタとそれに伴う関連市場は確実に成長を遂げていくが、一方で、こうした
著作権侵害の課題を解決することなくして、更なる成長は生まれないだろう。
今新たに3Dデータによる著作権侵害の課題を解決する動きが着実に浸透しつつある。
その代表的な取り組みが3Dプリントする際の3Dデータのストリーミング化だ。
こうした3Dデータの安全な取扱と、制作者の知的財産権が保護される仕組みが
整ってこそ、本当の3Dプリンタの浸透が始まると言っても過言ではない。
特にこれからは、大手小売りチェーンやメーカー各社が3Dプリント市場に参入
するには、データのストリーミング化と知的財産の保護は必須となる。
しかし、多くの方にとって重要なのは、この3Dプリンタの普及によって、
実ビジネスがどう変わるかということであろう。
・規模の経済はもはやビジネスモデルを決定しない。
・経験経済では、採算性の高い、成功を収める企業は、顧客に経験や変身をもたらす
製品や商品を売る企業である。
・3Dプリンティングによって、人々は本業を続けながら、自分が創作した新製品の
市場可能性を探ることができる。 など、メイカーズムーブメントの先にあるビジネス
の変化、社会の変化がどのような形になるのか、を見る必要がある。
3Dプリンティングの利点はただ必要なものをプリントするだけでない。
製品を販売する際に、どのような形状が売れやすいかを調べるため様々な形の製品を
プリントして、顧客にどの形なら買ってみたいか訊いてみるなどといったこともできる
ようになるし、一体型でプリントすることができる利点を活かして組立てや輸送費用
といったコストをカットすることも可能となるのだ。3Dプリンタ技術の進歩は人々の
生活をより良いものにするだろう。
このように素晴らしい技術であるが、著者は実用的な3Dプリンタの実現には今回
書いた記述以外でも、様々な課題があるとしている。それは例えば複数の素材を
用いて無数のデザインを組み合わせる技術や直観的に操作することのできる
アプリケーションの開発、新たなデザイン規格の作成、知的財産権などの法的課題
などである。
だが、技術の進化を止めることは出来ない。複数素材でプリントする3Dプリンタ
などは限定的であるものの実用化されており、他の課題についても10から20年後
には解決されるとしている。

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