地域の活動をしていると、人の多様性、意見の多様性を
感じざるを得ない。また、その多様性が、組織を活性化させる
場合もあり、低迷、消散させる場合もある。企業の活動の中では、
それを覆い隠し組織の方向性を高める必要性もあるが、頑張っている
企業の多くは、この多様性を容認し、如何に、個人と組織の方向性
を保つか?に工夫されている様である。
また、前回の衆議院選挙やチョット前の「アラブの春」に見られた
みんなの意見や集合知的対応が招いた結果としての是非のあり方もある。
IT活用を企業に進める立場の人間としても、「人とITの融合」に
この多様性や集合知を活かすことが重要と思っている。
「みんなの意見は案外正しい」(ジェームズ・スロウィキー)
「多様な意見はなぜ正しいのか」(スコット・ペイジ)
「集合知とは何か」(西垣 通)
を読み返している。
インターネットの拡大に伴い、多くの人たちが、自分の感じ方や考え方を
公開している。それら無数の声を自動的に集めてきて、人々の集合的な意見
を吸い上げ、政策に生かしたり、ビジネスに役立てたりできるという話
が多くある。当然、インターネット上の「集合知」がすばらしい働きをする
ことはある。でも、うまくいくのは、条件が整備された課題に限られる。
たとえば、これからの政治をどのように運営していけばいいかをネット上
の集合知にまかせたとしても、混乱をまねくだけであろう。
また、意外とみんなの意見を集約すると正しい場合も多い。しかし、その場合は、
すべて「基本的に正しい答えが存在」「回答者が充分に傾向が分散している」
「それを推定することができる」といった場合である。
たとえば「日本の少子化を止めるには?」といった絶対的な答えがでない問い
を、集合知で解決することは出来ない。
①「みんなの意見は案外正しい」からのポイント
以下の記述が気に入っている。
「集合的にベストな意思決定は意見の相違や異議から生まれるのであって、決して合意
や妥協から生まれるのではない」
これは、多様性の重要性を説く「多様な意見はなぜ正しいのか」も同様のベースを
持つものではないか。
また、「解決すべき問題は、認知、調整、協調」の3つであり、集合知が機能する
ためには「多様性、独立性、分散性、集約性」という条件が満たされなければ
ならない」と言っている。
・認知 正しい答えが必ず見つかる問題
・調整 他人の行動も加味する必要のある問題
・協調 自己利益だけ追求すると全体の利益を損なう問題(地域活動ではよくある)
そして、
・多様性 集団の中のそれぞれの人間が自分の私的な情報とそれに基づく意見を
持っており、突飛なものも含め色々な意見がある状態
・独立性 周囲の人の意見に影響されずに集団の中の人がそれぞれ意思決定
できる状態
・分散性 集団の中のそれぞれの人間がローカルで具体的な情報に基づき意思決定
をする状態
・集約性 多様な情報や意見を集め、うまく集約する仕組やプロセスがある状態
これらの条件は、現在のソーシャルメディア拡大の要件ともなっている。
②「多様な意見はなぜ正しいのか」からのポイント
「多様性が一様性に勝る」「多様性が能力に勝る」を明確に説いている。
そのため、まず集合知を4つのツール要素に分解する。
・多様な観点 状況や問題を表現する方法
・多様な解釈 観点を分類したり分割したりする方法
・多様なヒューリスティック 問題に対する解を生み出す方法
・多様な予測モデル 原因と結果を推測する方法
群衆の叡智や多数決が万能という意味ではない。むしろ限定的である。
ここでは、集合知の働く条件を以下のように結論している。
・問題が難しいものでなければならない
・ソルバーたちが持つ観点やヒューリスティックが多様でなければならない
・ソルバーの集団は大きな集合の中から選び出さなければならない
・ソルバーの集団は小さすぎてはならない
以上の条件が満たされれば、ランダムに選ばれたソルバーの集団は個人で
最高のソルバーからなる集団より良い出来を示す。専門の科学者達が解けないで
いる問題を、多様なツールボックスを持つ非専門家集団が解いてしまうことが
ありえる。
地域での活動での組織作り、企業での組織の活性化、いずれにおいても
色々な気付きが出てくる。
③「集合知とは何か」からのポイント
発想として考えさせられるのが、「生命体を機械化していく」のでは
なく、「生命体を機械でサポートする」形こそが重要である。主観的な知で
構成されている「閉鎖システム」である人間と、開放されパターン化さ
れた入出力を持つコンピュータのような「開放システム」とでは、
その融合化は難しいとのこと。
システムはすっかりと根をおろしており、その有用性はすでに広く知れ
渡っている。問題は「システム」そのものにあるのではなく、システムを
つかって「システム的な世界を構築すること」にある。
提示される「集合知を支援するIT」とは、その最も本質的なところでは
個人同士、集団同士をむすび、コミュニケーションの密度をあげ、活性化
していくものになる、そしてその為の方法としては、人間の暗黙知や
感性的な深層な「人間の主観的な部分」をすくいあげ、明示化するため
にITを使う。
ウィキペディアとグーグルからアマゾンやイーベイでの集合的相互評価
システムもあり、リナックスを例に集団的創造の話題に触れ、Twitter や
YouTube とブログを組み合わせて新しいジャーナリズムのあり方がある。
企業内コミュニケーションに悩む企業やソーシャルメディアの活用に
逡巡する企業でも、その原点に立ち返り、単なる表面的な解決では
済まさず、今後の進め方を考えて欲しいものである。
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