インターネットの拡大により個人、団体、企業との関わりは大きく変わってきた。
特に消費社会での様々な評価サイトや個人レベルでの評価の重み、など日本でも
10年ほど前から顕著になっている。facebookや幾つかのコミュニティサイトが
社会の基盤のかなりの部分を占め、個人と企業とのつながりもインターネット上での
膨大なデータから更に強まっている。2005年ぐらいから拡大始めた「人を中心
とするインターネット」は人がインターネット上で様々な活動を行う事が主であった。
人の表現力やコミュニケーション力を充実させる事は一定の収束に向い、今は
「データ」と「モノ」がソーシャルネットの上でつながり、IoTと呼ばれるが、
現在の人が中心のネットと合わせて混在し、よりつながりの深まった世界と
なっている。
そのような複雑高度につながった状況でも、重要な動きの1つがマッシブと言う概念
と言われている。膨大な数の人々が同時にリアルでコミュニケーションし、そのために
最適なインターフェイスを提供する事がよりネット世界での満足度をあげるポイント
となっていく。マッシブは、「膨大な数の個体が凝縮した群体」であり、従来の
均一的なマスとは大きく異なり、個体と群体の間にも様々なつながりが出来る。
それは、スマホの拡大普及によって従来の交換体形とは異なる経済の体形が可能
となるとともに、個人の行動変化も 受け身ではなく、能動的、多面的に情報を
集めて理解し、行動することが必要となるはずである。
・少し前の日経BPのレポートでもIT技術を上手く活用すれば、違う広がりもある
はずとの指摘をしている。
1)人のつながりの拡大
働き方の改革に関して日本で主に議論されるのは人の流動化だが、1人が一組織に
長期間所属する「正社員」があるべき姿で、その機会を全員に与えようとすると
なかなか解を見出せない。長期間雇用されるかわりに様々な仕事をする正社員と
パートタイマーやアルバイト以外にも、色々な働き方がある。企業に所属するが、
仕事の内容、労働時間、勤務場所などについて取り決めてから働くやり方もあれば、
専門能力や人脈を活かした「1人企業」(個人事業主)として働く道もある。
1人が一組織だけではなく、複数の企業やチームあるいはNPO(非営利組織)
に参加して仕事をする「双職」もある。
個人と仕事のつながりは今後増えていくと予想される。
日本の「個人と仕事のつながりの総数」を推定したところ、現在の「7181万」
が5年後にほぼ2倍、「1億2700万」に増える結果になった。日本の就業者数
6246万人を上回っているのは、すでに複数の働く場を持っている人がいるためだ。
つながりの総数は次のように算出した。調査回答者に「今、働く場をいくつか
持っているか「5年の間に、いくつにしたいか」を聞き、各世代ごとに働く場の
数の平均値を求めた。各平均値を世代別の人口に乗じて、世代別のつながり数とし、
これらの合計を総数とした。
つながりの増加は日本経済を活性化する。企業や組織は新たにつながる人の知見を
活用し、組織間の壁を越えて新しい取り組み(イノベーション)を始められる。
さらに組織につながっていなかった女性やベテラン(高齢者)は働きたい時に
その力を発揮できるようになる。
2)ICT活用手段としてのクラウド利用が増える?
個人と仕事のつながりが増えるにあたっては、情報通信技術(ICT)が貢献する。
モバイル機器さえあれば、インターネットにつなぐだけで仕事に役立つサービスを
利用できる環境がすでに整っている。
チームで取り組んでいる仕事の進捗や成果物の状況をメンバー同士が把握できる
ようにするサービスや、販売管理や顧客管理といった業務処理サービスを提供する
クラウドが用意されている。
仕事を支えるクラウドの認知や利用率はまだ低いが、使いたいという意欲はあり、
クラウド利用はこれからが本番と言える。
クラウドの利点は事前に用意されたサービスをすぐ使えること。必要なサービスがなけ
れば自分で開発し、それを新たなクラウドにして他者に提供し、職場を増やす「贈職」
もできる。
サービスを実現しているのはアプリケーション・ソフト(アプリ)である。「クラウド
を使ってアプリを開発してみたいと思うか」という質問に対し、「すでに試みている」
(1・1%)、「ぜひやってみたい」(6・5%)、「どちらかというとやって
みたい」(26%)という回答があり、合計すると3分の1が前向きであった。
・この進歩の加速度的な速さに圧倒されるだけでは、何も解決にならない。自身の立ち
位置を再度キチンと見ることも要請されている。情報化、インターネットの拡大は余り
自分に関係ないと思っている方もまだまだ少なくない。
しかし、エリック・ブリニョルフソン氏共著の「機械との競争」はそうではないことを
示している。米国のデータとそこからの視点ではあるが、日本でもすでに起きている
ことと思って欲しい。
「機械との競争」より
「なぜ米国ではそんなにたくさんの人が職を失っているのか。そしてなぜ所得
の中間値が1997年よりも低くなったのか」という問いから始まった。
イノベーションが進み生産性が向上したのに、なぜ賃金は低く、雇用は
少なくなったのか?
「デジタル技術の加速」のためである。それは生産性の向上をもたらしたが、
ついていけない人々を振り落としてしまった。ある人たちは多くのものを得て、
別の人たちは少ないものしか得られずに終わる。それが過去15年に起きたこと。
国全体の富は増えたが、多くの人にとって分け前は減った。残りは上位1%が
取っていったから。
考えなくてはならないのは、技術は常に雇用を破壊するということ。
そして常に雇用を創出する。問題はそのバランスであるが、その後、技術
による雇用破壊は雇用創出より速く進んだ。それがこの10年の現象という。
かつては生産性の伸びと同じように雇用も伸びてきたが、97年頃から
雇用が置いていかれるようになった。
その主因は、「デジタル技術の加速」にある。
デジタル技術には3つの側面がある。
①指数関数的に発展するということ。人類の歴史に登場したどんな技術よりも
速く進化します。蒸気機関よりも電気よりも速い。ご存じの「ムーアの法則」
では、コンピューターの性能は18カ月で2倍になります。それは指数関数的な
スピード。人々はそれに追いついていけなくなっている。
②デジタル技術は以前の技術よりも、より多くの人に影響を与えるということ。
今日、コンピューターの発展は、ほとんどの働き手に影響を与える。米国では
全労働者の業務のうち約65%が(コンピューターを使った)情報処理に関わるもの。
事務職、マネジャー、あるいは学校の先生、ジャーナリストやライターなど、
幅広い仕事がそれに含まれる。過去よりも多くの人が影響を受ける。
③ひとたび何かが発明されると、ほとんどコストなしでコピーができる。
そしてそのコピーを即座に世界のどこへでも送り、何百万人という人が同じもの
を手にすることができる。高いお金をかけて工場を建設しなければならない製造業
などとは全然違う。過去200年とは全く異なる影響を雇用にもたらす。
雇用は中国に移ったのではない。ロボットに移った
製造業は米国では縮小してきました。それはまた別の重要な論点を生む。製造業
における米国の雇用縮小の背景として、生産拠点の海外移転や中国の台頭が
挙げられてきた。
しかし、調査の結果、分かったのは、中国では製造業で働く人が97年に比べ
2000万人以上少なくなっているということ。雇用が米国から中国に移った
のではない。米国と中国からロボットに雇用が移ったというのが正しい。
「デジタル革命」や「機械との競争」は、生産の海外移転よりももっと重要
な論点のはず。
テクノロジーと経済は非常に速く変化している。もし我々が何もしなければ、
危機に陥り、多くの人が仕事を失うことになる。しかし、うまく対応できたら、
つまり技術の利点を取り入れることができたら、すべての人にとってチャンス
を生み出せる。
日本の雇用状況や経済状況を見る上においても、示唆のあるデータや
コメントがある。
・これからは今まで以上に個人の意識アップが求められる。
先ずは、自身の受身的な対応から一歩先に進むこと、情報の意図を読み説き、疑問を
持つ能力が必要となってくる。
情報には、環境管理型権力という人を無意識のうちに動かしていく力がある。
身近な例で言うと、人の動かし方のことであり、一方的に命令するのではなく、
なんとなく誘導していき、本人は楽しく生きているつもりでも、実はある目的を持った
力によって巧妙に操作・支配されている社会のこと。すなわち、社会を生きる人間に
どれほどの主体性、自分でものごとを決定する力があるのだろうか、ということを
考えるきっかけであり、情報技術はこのような力がとても強いということを深く考える
ことでもある。インターネットに接続して何かをしている時には、常に何らかの
意図的な力を受けていると考えてもいい。何気なく電車やヒマな時間に眺めている
SNSのタイムラインやニュースメディアのヘッドラインにどのような種類の情報
が流れてくるのかは目に見えないアルゴリズムが決めているし、画面内での情報
提示の仕方などのユーザー体験のデザインによっても、次にどのような情報を見よう
とするかということに働きかけることができる。
さらに、今後はIOT技術などによって、現実空間もアルゴリズムと常時接続して
いき、日常生活全てが問題そのものになっていく。
発信者の情報を表面的に肯定したり否定するばかりではなく、その背景の意図をきちん
と読みとる能力、疑問を持つ能力、批評精神が弱まれば、単純な考え方や応答の仕方
しかできなくなってしまう。個人的には疑問を持つこと、新しい問いを生むことが
このような事態に対して対応できることになる。
スマホのアプリやサービスを電話のような使い方をしているのをよく見かけるが、
そこには人間としての主体的な行動が余りかんじられない。単に来た情報を消費して
いるだけであり、受身の行動が目立つ。
「クラウド化する世界」で著者のニコラス・カー氏は、「インターネットは、情報収集
からコミュ二ティ作りに至るまで、あらゆることを簡単な処理に変えて、大抵の事は、
リンクをクリックするだけで表明出来る様になった。そうした処理は、1個1個は
単純でも、全体としては、極めて複雑だ。我々は、1日に何百何千回というクリックを
意図的に、あるいは衝動的に行っているが、そのクリックの度に自分自身の
アイデンティティや影響力を形成し、コミュ二ティを構築しているのだ。
我々がオンラインでより多くの時間を過ごし、より多くのことを実行するにつれて、
そのクリックの複合が、経済、文化、及び社会を形作ることになるだろう。」
と述べている。
ぜひ、彼の言う「自分自身のアイデンティティや影響力を形成し、コミュ二ティを
構築しているのだ。」になって欲しいものだ。
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