2016年1月24日日曜日

里山資本主義とは

大分前から市の協働事業化のための色々な対応をしている。
行政も、以前のハコモノ行政と呼ばれるような十分なる支援が出来る状態ではない。
いずれにしろ、金がないのである。
このような環境の中で、市民や地域企業を如何に上手く地域事業の中に組み込んで
いけるのか?が今後、大きなテーマとなる。様々な市民向けサービスの質を
低下させずに、その満足度を上げていくのか、が大きな行政のテーマでもある。
しかし、市民も行政も豊富な資金でのサービス支援の出来た古き良き時代に
慣れている。
人間、面倒なことは嫌なのである。まだまだ、旧き良き時代感覚が蔓延している
のでは?そんな意識が消えない。
先日も、市民からの様々な協働事業をテーマとする事業案件の説明を聞いた。
地域の文化遺産を継承していくためのイベント、ウォークによる市民参加
のイベント等もある。他にも、定番的な事業としては、商店街の空き家の活用、
親子や女性の地域参加への仕組み作りなどである。農業に絡む様々な仕掛けも
あるが、湖北などと違い、案件は少ない。都市型サービス的な事業が多い。
そして、まだ、行政の支援に「おんぶに抱っこの姿勢」が殆どである。
個人的には、協働事業の大きな要件の1つに、「自立的な事業化」が必須と
思っているが、審査委員の「もし、この案件が採択されない時には、事業を
実施しますか?」の回答に、「止めます?」とのこと。
「想い」の強さは、行政からの支援金に依存するようである。
確かに、地域で活動していこうとする人は増えている。特に、若い人の意識は
地域の中で自分は何が出来るのか?を意識し、様々な活動に進んで関わって行く
人が増えている。
例えば、未来塾と言う地域の中で色々と課題を見つけ、その解決に先導的な
役目の人を育てる塾があるが、ここ2年では、塾生の構成が変わってきている。
退職者などが減り、30代や40代のバリバリ現役組が増加している。
その彼らは、地域に関する問題意識も高い。
里山での活動やその活性化などは、テーマとしてあるもの、ボランティア
的な活動が主のようであり、事業化への取り組みは、それほど多くない。
最近、「里山資本主義」なる本を読んだ。
1.「里山資本主義」から想うこと
本書は、エネルギーという最もカネに近い物品という、里山という言葉から最も縁がな
さそうな事例からはじまる。岡山県真庭市の銘建工業。山奥とはいっても岡山市まで一
時間ちょっとの田舎にある製材会社。
ここでは、製材時に出る木屑で発電している。まずは自社で使い、余った分を売ってい
る。自社で使う電力が一億円相当で、売電分が5000万。しめて1億5000万。もしこの木
屑を産業廃棄物として処分すると、2億4000万ほどかかる。しめて年間3億9000円。木屑
発電所の設備費10億円は、三年足らずで回収できる。
しかし同社の主力製品は、あくまで材木。材木が売れるから木屑が出て、木屑が出るか
ら発電も出来る。
そして、林業先進国オーストリアの話もある。
人口900万に満たないが、失業率で日本を下回り、一人当たりGDPで日本を上回る。
面積が北海道とほぼ同じで。森林面積は日本の15%。
なのに同国の林業は30億ユーロの貿易黒字と、全エネルギーの10%を賄っている。
まずは、我々があまり活用を考えなくなった周辺自然資源を再度、見直すことの
必要性を事例とデータで、説いている。
カネが全てのようなグローバル経済に惑わされることなく、地域の資源の見直しの
必要性を言っている。それは、ガラパゴス的な経済と自給自足を目指せということ
ではない。世界と地域の両輪を考え、そのためには、自分たちに何があって、
何がないのかをきちんと知る必要がある。何故、この20年経済政策が空回り
してきたのか?自分が何を持ち、そこにどんな価値が見出せるのか
を知らなかったからだ、と言っている。
里山を資本とした利子生活においては、人口減少も高齢化もむしろ追い風なので
ある。里山では、都会では味わえない自然と水と空気と家庭菜園と、比較にならない
ほどの食材やゆとりある住居が格安にある。
人の意識も徐々に変わりつつある。地域への参加増大もその1つであろう。
2.様々な地域での活動からの気付き
地域活性化には「あるもの探し」や「ばかもの、よそもの、わかもの」が必要と
言われているが、周辺や訪問した地域での気付きとしては、
①「お年寄りをお年寄りとして扱わない」、というのがあり、現役バリバリで
やっているお年寄りが多くいるところは地域全体元気。
②一人一人が役割をもっているところは、何かがおきても続けられる。
逆に、何かの歯車としてやっている人たちというのは何かあると弱い。
指導的な人と支援する人の関係が重要である。
③自分たちで文化を生み出し、守り、それを観に来る人たちが沢山いて、
そういう人たちから収入を得る、そのお金で程よく文化を守る、というかたち。
徳島県上勝町や長野県小布施などは良いサイクルを創っている。
④「あなたはこういう役割を担っている人です。」という、場があって
コミュ二ティがあって、集まって、リーダーがいて、話すきっかけがあればいい。
情報のやりとりがなくなっているというところは過疎化もするし、コミュ二ティが
小さくなって行くような気がする。
⑤地域関係者でのネットワーク作り
農家民宿、農業体験を実施するNPO法人、老人会、自治会等とも連携し
て目標を共有化して行く。農業者を主役とした魅力ある地域づくり・交流事
業(グリーンツーリズム等)を推進し、その効果を農業者自身が実感し始める。
⑥捨てられたもの、無くなりそうな物などまずは、身近にあるものを
キチンと見直す。これには、多様な人の視点を入れることが重要。
「里山資本主義」に紹介されているのは、全国的な活動の中では、僅かな
事例である。個人レベルでのミクロなビジネスでも、多くの取り組みが
出てくれば、また、違う社会観が出てくる。GDPの数%に落ちた農業
生産や林業も新しいビジネスの形として、次の展望が拓かれて来る。
そうすることが、我々の使命かもしれない。

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