2017年7月3日月曜日

国家的な祭祀の場となってきた伊勢神宮と出雲大社。その本殿建築は日本最古の様式を今に伝えていますが、構造は異なります。比べてみると、その特徴が明快です。

伊勢神宮は“穀倉”に基づく「唯一神明造り」

一般的な神社建築のひとつが「神明造り」ですが、そのなかでも伊勢神宮の正殿はほかでは用いられない特別な様式であるため、「唯一神明造り」と一般に呼ばれています。 これは古代の高床式穀倉が宮殿形式に発展したもの。屋根は「切妻」(本を伏せたような傾斜の屋根)の茅葺で、出入り口は「平入り」、柱を地中に埋める掘立式で、棟持柱が特徴。檜の素木を材にした直線的でほとんど装飾のない簡素な美しさが、2000年もの間〝常若〟であり続ける伊勢神宮を象徴しています。

出入り口はこの向きに

屋根の傾斜面側に出入り口がある「平入り」という形式。

同じようでいて違う内宮と外宮。「千木」の様式も異なります

内宮の千木の先端は地面と水平の内削ぎで、風穴はふたつ半。外宮は、先端は地面に垂直に切られた外削ぎで風穴はふたつ。神域の通行も右側通行(内宮)と左側通行に区別されるなど、内宮と外宮で違いがある。

出雲大社は“住居”に近い「大社造り」

出雲大社の本殿の構造は「大社造り」。屋根の頂部の棟から、両側に屋根が流れ、妻(山形が見えるほう)に出入り口がある「妻入り」が特徴のひとつです。内部は奥行き、間口ともに約11mの正方形の空間で、中央には神聖な「心御柱」が立ち、ほか9本の柱で田の字形につくられています。
柱は礎石の上に立っていますが、鎌倉時代以前は根元が地面に埋まった掘立柱形式でした。屋根は檜皮葺、棟の上には鰹木と千木が上がっています。礎石から千木の先端までの高さが約24m。古代はさらに高かった可能性があり、平安時代から鎌倉時代にかけては倒壊が7度に及んだことが記録に残っています。
現在の本殿は、時代によって細部に変化している部分がありますが、基本的な様式は古代のものと変わっていません。日本の住居の起源とする見方もあり、日本建築史を語る上でも貴重な存在なのです。

檜皮葺の屋根が重厚。軒の厚さは約1m!

緻密な檜皮が、屋根の木材を風雨から守る。檜皮は職人により竹の釘で丹念に留められている。

千木や鰹木を守る伝統の「ちゃん塗り」

屋根の装飾に施された漆黒の塗装は「ちゃん塗り」という伝統技法。銅板を保護する役目が。

なんと伊勢と出雲は鳥居の形も異なります!

伊勢神宮の鳥居は立てた柱を結ぶ材(貫)は短く、上に載る材(笠木)に傾斜がない。出雲大社は笠木とその下の材(島木)に反りがあり、貫は円柱を貫いている。

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