二十四節気(にじゅうしせっき)は半月毎の季節の変化を示していますが、これをさら に約5日おきに分けて、気象の動きや動植物の変化を知らせるのが七十二候(しちじゅ うにこう)です。二十四節気と同じく古代中国で作られました。二十四節気が古代のも のがそのまま使われているのに対し、七十二候は何度も変更されてきました。 日本でも、江戸時代に入って日本の気候風土に合うように改定され、「本朝七十二候」 が作られました。現在主に使われているのは、明治時代に改訂された「略本暦」のもの です。 ちなみに「気候」ということばは、この「節気」と「候」からできています。 ※二十四節気について詳しい説明はこちらをご覧ください。 → 二十四節気 七十二候の名称は、気候の変化や動植物の様子が短い文で表されています。私たちの暮 らしでは目にする機会の少ない事象もありますが、おおかたはその時期の「兆し」を伝 え、繊細な季節のうつろいを感じさせてくれます。 俳句 夏 十六夜の気色わけたり比良伊吹 鳴神や幾度比良へ帰る雲 士朗 いかほども雲たくはへよ比良伊吹 千影 白雨や比良より雲の出来心 団室 和歌 夏 ほととぎす 三津の浜辺に 待つ声を 比良の高嶺に 鳴き過ぎべしや 春 山笑う 二十四節気「立春(りっしゅん)」 ・東風解凍(はるかぜこおりをとく)2月4日頃 春の風が川や湖の氷を解かし始める頃。「東風」(こち)とは春風を表す代名詞。 →蕗のとう ・黄鴬?睆(うぐいすなく)2月9日頃 山里で鴬が鳴き始める頃。春の訪れを告げる鴬は「春告鳥」(はるつげどり)とも呼ば れます。 →さやえんどう、梅 ・魚上氷(うおこおりをいずる)2月14日頃 水がぬるみ、割れた氷の間から魚が飛び跳ねる頃。春先の氷を「薄氷」と呼びます。 →あまご、山女魚、岩魚。めじろ。明日葉。谷汲み踊り。 二十四節気「雨水(うすい)」 ・土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)2月18日頃 雪がしっとりとした春の雨にかわり、大地が潤い始める頃。「脉」は脈の俗字です。 →春キャベツ。 ・霞始靆(かすみはじめてたなびく)2月23日頃 春霞がたなびき始める頃。春の霞んだ月を「朧月」(おぼろづき)と呼びます。 →辛子菜。 ・草木萌動(そうもくめばえいずる)2月28日頃 草木が芽吹き始める頃。催花雨、草の芽が萌え出すことを「草萌え」(くさもえ) とも言います。また、木々についても木の芽起こし、木の芽萌やしとも言います。 →緑繁縷(はこべ)、菜花。 二十四節気「啓蟄(けいちつ)」 ・蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)3月5日頃 戸を啓いて顔を出すかのように、冬ごもりをしていた生きものが姿を表す頃。 →わらび、ぜんまい、菫(すみれ)。鰆。 ・桃始笑(ももはじめてさく)3月10日頃 桃の花が咲き始める頃。花が咲くことを「笑う」と表現、「山笑う」は春の季語です。 →梅、桃、新たまねぎ。さより。 ・菜虫化蝶(なむしちょうとかす)3月15日頃 青虫が紋白蝶になる頃。「菜虫」は菜を食べる青虫のこと。菜の花が咲いて まさに春本番。 →かたばみ、葉わさび。やまとしじみ(小さな蝶)。 二十四節気「春分(しゅんぶん)」 ・雀始巣(すずめはじめてすくう)3月20日頃 雀が巣を作り始める頃。昼の時間が少しずつ伸び、多くの小鳥たちが繁殖期を 迎えます。 →蕗、関東たんぽぽ。ひばり。 ・桜始開(さくらはじめてひらく)3月25日頃 桜の花が咲き始める頃。桜前線の北上を日本中が待ち望む、お花見の季節の到来です。 →こぶし、アスパラガス。さくらえび。 ・雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)3月30日頃 春の訪れを告げる雷が鳴り始める頃。「春雷」(しゅんらい)は「虫出しの雷」とも呼 ばれています。 →うど、木蓮。真鯛。 二十四節気「清明(せいめい)」 ・玄鳥至(つばめきたる)4月5日頃 燕が南の国から渡ってくる頃。「玄鳥」(げんちょう)とは燕の異名です。 →行者にんにく。初鰹。 ・鴻雁北(こうがんきたへかえる)4月10日頃 雁が北へ帰っていく頃。雁は夏場をシベリアで、冬は日本で過ごす渡り鳥です。 →たらのめ(山菜)。ほたるいか。 ・虹始見(にじはじめてあらわる)4月15日頃 雨上がりに虹が見え始める頃。淡く消えやすい春の虹も次第にくっきりしてきます。 →みつば、小楢(花が咲く頃)。雨前茶。 二十四節気「穀雨(こくう)」 瑞雨、甘雨、春琳、催花雨等春の雨には色々ある。 ・葭始生(あしはじめてしょうず)4月20日頃 水辺の葭が芽吹き始める頃。葭は夏に背を伸ばし、秋に黄金色の穂をなびかせます。 →葦牙(あしかび)、新ごぼう。鯵。 ・霜止出苗(しもやみてなえいずる)4月25日頃 霜が降りなくなり、苗代で稲の苗が生長する頃。霜は作物の大敵とされています。 →よもぎ。いとより。 ・牡丹華(ぼたんはなさく)4月30日頃 牡丹が大きな花を咲かせる頃。豪華で艶やかな牡丹は「百花の王」と呼ばれています。 八十八夜。 →牡丹、こごみ。さざえ。 俳句 春 八講の比良山見ゆれ枯木原 青々 八講はすぎたしらせか鶴のこえ 楓下 春は京冬は残れリ比良の山 道加 八景は比良にかたまる桜かな 麦水 花野来て比良の横雲望みけり 華村 和歌 春 ・桜さく比良の山風吹くままに 花になりゆく志賀の浦なみ 御京極 ・花さそうひらの山風ふきにけり こぎ行く船の跡見ゆるまで 宮内卿 ・桜咲く比良の山風ふくなへに 花のさざ波寄する水海 大納言定国 ・さざ波の近江の海に船はてて 比良の山桜ちるまで見む 荷田蒼生子 夏 山滴る。 二十四節気「立夏(りっか)」 ・蛙始鳴(かわずはじめてなく)5月5日頃 蛙が鳴き始める頃。水田の中をスイスイ泳ぎ、活発に活動を始めます。「かわず」は蛙 の歌語・雅語。 →藤、にんじん。金目鯛。 ・蚯蚓出(みみずいずる)5月10日頃 みみずが地上に出てくる頃。畑土をほぐしてくれるみみずは、動き始めるのが少し遅め です。 →苺。ほおじろ。いさき。 ・竹笋生(たけのこしょうず)5月15日頃 たけのこが出てくる頃。たけのこは成長が早く、一晩でひと節伸びると 言われています。 →筍。あさり。 二十四節気「小満(しょうまん)」 ・蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)5月21日頃 蚕が桑の葉を盛んに食べだす頃。蚕がつむいだ繭が美しい絹糸になります。 →そらまめ。きす。 ・紅花栄(べにばなさかう)5月26日頃 紅花の花が咲きほこる頃。紅花は染料や口紅になり、珍重されました。 →しそ、紅花。車えび。 ・麦秋至(むぎのときいたる)5月31日頃 麦の穂が実り始める頃。「秋」は実りの季節を表し、穂を揺らす風は「麦の秋風」。 刈り取りを待つ麦畑は一面の黄金色。この頃、降る雨を麦雨ばくうと呼ぶ。 →枇杷。べら。四十雀しじゅうから(ツィピーツィツィピーと啼く)。 二十四節気「芒種(ぼうしゅ)」 ・蟷螂生(かまきりしょうず)6月5日頃 かまきりが卵からかえる頃。ピンポン球ほどの卵から数百匹の子が誕生します。 →ラッキョウ、苗代苺。あいなめ。 ・腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)6月10日頃 草の中から蛍が舞い、光を放ち始める頃。昔は腐った草が蛍になると考えていました。 →とまと。するめいか。蛍。 ・梅子黄(うめのみきばむ)6月15日頃 梅の実が黄ばんで熟す頃。青い梅が次第に黄色みをおび、赤く熟していきます。 →梅が旬、すいかずら。すずき。 二十四節気「夏至(げし)」 ・乃東枯(なつかれくさかるる)6月21日頃 夏枯草の花が黒ずみ枯れたように見える頃。「夏枯草」(かごそう)はうつぼ草 の異名です。その花穂は生薬として役立っています。 →ウツボグサ、夏みかん。鮎。 ・菖蒲華(あやめはなさく)6月26日頃 あやめの花が咲き始める頃。端午の節供に用いる菖蒲(しょうぶ)ではなく、花菖蒲のこ とです。青嵐、青時雨。 →菖蒲、茗荷。かんぱち。 ・半夏生(はんげしょうず)7月1日頃 半夏が生え始める頃。田植えを終える目安とされました。「半夏」は「烏柄杓」(から すびしゃく)の異名。半夏雨。 →おくら。はも。 二十四節気「小暑(しょうしょ)」 ・温風至(あつかぜいたる)7月7日頃 熱い風が吹き始める頃。温風は梅雨明けの頃に吹く南風のこと。日に日に暑さが増しま す。 →ほおずき。こち。 ・蓮始開(はすはじめてひらく)7月12日頃 蓮の花が咲き始める頃。優美で清らかな蓮は、天上の花にたとえられています。 →蓮、とうもろこし。かれい。 ・鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)7月17日頃 鷹の子が飛ぶ技を覚え、巣立ちを迎える頃。獲物をとらえ一人前になっていきます。 →モロヘイヤ。鰻。ハチクマ。 二十四節気「大暑(たいしょ)」 ・桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)7月23日頃 桐の花が実を結び始める頃。桐は箪笥や下駄など暮らしの道具に欠かせないものです。 →桐の花、きゅうり。そうめん。うに。 ・土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)7月28日頃 土がじっとりとして蒸し暑くなる頃。蒸し暑いことを「溽暑(じょくしょ)」と 言います。 →八朔(八月一日の早稲の穂)、枝豆。あなご。 ・大雨時行(たいうときどきふる)8月2日頃 ときどき大雨が降る頃。むくむくと湧き上がる入道雲が夕立になり、乾いた大地を潤し ます。 →すいか。太刀魚。かぶとむし。 秋 山装う 二十四節気「立秋(りっしゅう)」 ・涼風至(すずかぜいたる)8月7日頃 涼しい風が吹き始める頃。まだ暑いからこそ、ふとした瞬間に涼を感じること ができます。秋隣。 →露草、桃。しじみ。 ・寒蝉鳴(ひぐらしなく)8月12日頃 カナカナと甲高くひぐらしが鳴き始める頃。日暮れに響く虫の声は、一服の清涼剤。 →ほおずき。めごち。ひぐらし。 ・蒙霧升降(ふかききりまとう)8月17日頃 深い霧がまとわりつくように立ち込める頃。秋の「霧」に対して、春は「霞」と呼びま す。樹雨きさめ →水引、新しょうが。真たこ。 二十四節気「処暑(しょしょ)」 ・綿柎開(わたのはなしべひらく)8月23日頃 綿を包むガクが開き始める頃。綿の実がはじけ白いふわふわが顔をのぞかせた様子。 →すだち、綿花。かさご。 ・天地始粛(てんちはじめてさむし)8月28日頃 天地の暑さがようやくおさまり始める頃。「粛」は縮む、しずまるという意味です。 野分のわき。 →ぶどう。ぐち。 ・禾乃登(こくものすなわちみのる)9月2日頃 いよいよ稲が実り、穂を垂らす頃。「禾」は稲穂が実ったところを表した象形文字。 →無花果いちじく、きんえのころ。まつむし。鰯。 二十四節気「白露(はくろ)」 ・草露白(くさのつゆしろし)9月7日頃 草に降りた露が白く光って見える頃。朝夕の涼しさが際立ってきます。 →秋の七草(萩、すすき、葛、なでしこ、おみなえし、藤袴、桔梗)。島鯵。 秋の野に咲きたる花を指および折り かき数ふれば七種ななくさの花 山上憶良 ・鶺鴒鳴(せきれいなく)9月12日頃 せきれいが鳴き始める頃。せきれいは日本神話にも登場し、別名は「恋教え鳥」。 →梨、オシロイバナ(夕化粧ともいう)。あわび。鶺鴒せきれい チチィとなく。 ・玄鳥去(つばめさる)9月17日頃 燕が子育てを終え、南へ帰っていく頃。来春までしばしのお別れです。 →鶏頭、なす。昆布。 二十四節気「秋分(しゅうぶん)」 ・雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)9月23日頃 雷が鳴らなくなる頃。春分に始まり夏の間鳴り響いた雷も、鳴りをひそめます。 →彼岸花、松茸。はぜ。 ・蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)9月28日頃 虫たちが土にもぐり、入口の戸をふさぐ頃。冬ごもりの支度をする時期です。 →紫苑、里芋。さんま。茅場(ススキの野原)芋茎ずいき、里芋の茎。 ・水始涸(みずはじめてかるる)10月3日頃 田んぼの水を抜き、稲刈りの準備をする頃。井戸の水が枯れ始める頃との説も。 →金木犀、銀杏、稲の実り。とらふぐ。 二十四節気「寒露(かんろ)」 ・鴻雁来(こうがんきたる)10月8日頃 雁が渡ってくる頃。清明の時期に北へ帰っていった雁たちが、再びやってきます。 →ななかまど、しめじ。ししゃも。鴈渡し(晩秋に吹く北風) ・菊花開(きくのはなひらく)10月13日頃 菊の花が咲き始める頃。旧暦では重陽の節供の時期で、菊で長寿を祈願しました。 →栗。はたはた。菊晴れ(菊の花が咲くころに青空が晴れ渡る) ・蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)10月18日頃 戸口で秋の虫が鳴く頃。昔は「こおろぎ」を「きりぎりす」と呼びました。 →柿。鯖。 二十四節気「霜降(そうこう)」 ・霜始降花(しもはじめてふる)10月23日頃 山里に霜が降り始める頃。草木や作物を枯らす霜を警戒する時期です。 →紫式部。ほっけ。ひよどり ヒーヨとなく。 ・霎時施(しぐれときどきふる)10月28日頃 ときどき小雨が降る頃。「霎」をしぐれと読むことも。ひと雨ごとに気温が 下がります。初時雨、片時雨、横時雨 →山芋。きんき。 ・楓蔦黄(もみじつたきばむ)11月2日頃 楓(かえで)や蔦の葉が色づく頃。晩秋の山々は赤や黄に彩られ、紅葉 狩りの季節です。 →さつまいも。かわはぎ。 俳句 秋 風雲や時雨をくばる比良おもて 大草 夕焼けの比良を見やりつ柿赤し 惣之助 楊梅の瀧見失う船の秋 虚子 有明や比良の高根も霧の海 白堂 名月やひそかに寒き比良が嶺 歌童 和歌 秋 ・ち早ふる比良の御山のもみぢ葉に ゆうかけわたすけさの白雲 安法 ・宿りするひらの都の仮庵に 尾花みだれて秋風ぞ吹く 光俊朝臣 ・小浪や比良の高嶺の山おろしに 紅葉を海の物となしたる 刑部卿範 冬 山眠る 二十四節気「立冬(りっとう)」 ・山茶始開(つばきはじめてひらく)11月7日頃 山茶花(さざんか)の花が咲き始める頃。椿と混同されがちですが、先駆けて咲くのは 山茶花です。 →みかん。ひらめ。 ・地始凍(ちはじめてこおる)11月12日頃 大地が凍り始める頃。サクサクと霜柱を踏みしめて歩くのが楽しみな時期です。 →ほうれんそう、茶の花。毛蟹。 ・金盞香(きんせんかさく)11月17日頃 水仙が咲き芳香を放つ頃。「金盞」は金の盃のことで、水仙の黄色い冠を 見立てています。 →れんこん、水仙。甲いか。まひわ(冬を告げる鳥) 二十四節気「小雪(しょうせつ)」 小春日和(旧暦10月を小春、暖かな陽射し包まれ陽気になる日がある) ・虹蔵不見(にじかくれてみえず)11月22日頃 陽の光も弱まり、虹を見かけなくなる頃。「蔵」には潜むという意味があります。 →りんご、野茨。くえ。新嘗祭 ・朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)11月27日頃 北風が木の葉を吹き払う頃。「朔風」は北の風という意味で、木枯らしをさします。 →白菜、やつで。かわせみ。かます。 ・橘始黄(たちばなはじめてきばむ)12月2日頃 橘の実が黄色く色づき始める頃。常緑樹の橘は、永遠の象徴とされています。 →橘(常緑樹で黄色の実)、セロリ。ぼら(はく、すばしり、おぼこ、いな、ぼら、と ど)。 二十四節気「大雪(たいせつ)」 ・閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)12月7日頃 空が閉ざされ真冬となる。空をふさぐかのように重苦しい空が真冬の空です。 →ふろふき大根。ぶり。大鷺。 ・熊蟄穴(くまあなにこもる)12月12日頃 熊が穴に入って冬ごもりする頃。何も食べずに過ごすため、秋に食いだめをします。 →ねぎ、椿。牡蠣。 ・鮭魚群(さけのうおむらがる)12月17日頃 鮭が群がって川を上る頃。川で生まれた鮭は、海を回遊し故郷の川へ帰ります。 →にら。鮭。むみらさきしじみ。 二十四節気「冬至(とうじ)」 冬至梅がある。 ・乃東生(なつかれくさしょうず)12月22日頃 夏枯草が芽をだす頃。夏至の「乃東枯」に対応し、うつぼ草を表しています。 →柚子、千両、万両。まぐろ。こげら。 ・麋角解(さわしかのつのおつる)12月27日頃 鹿の角が落ちる頃。「麋」は大鹿のことで、古い角を落として生え変わります。 →かぼちゃ。鯉。おなが。 ・雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)1月1日頃 雪の下で麦が芽をだす頃。浮き上がった芽を踏む「麦踏み」は日本独特の風習です。 →百合根。イセエビ 初茜(初日直前の茜空。夜の暗がりから白み、明るみ、茜に染まる東雲しののめの空。 二十四節気「小寒(しょうかん)」 ・芹乃栄(せりすなわちさかう)1月5日頃 芹が盛んに育つ頃。春の七草のひとつで、7日の七草粥に入れて食べられます。 →春の七草(せり、なずな、ごぎょう(ははこぐさ)、はこべら(はこべ)、 ほとけのざ(こおにたびらこ)、すずな(蕪)、すずしろ(大根)。鱈。 ・水泉動(しみずあたたかをふくむ)1月10日頃 地中で凍っていた泉が動き始める頃。かすかなあたたかさを愛おしく感じる時期です。 →春菊、柊。こまい(氷下魚)。寒九の雨。 ・雉始?(きじはじめてなく)1月15日頃 雉が鳴き始める頃。雄がケーンケーンと甲高い声をあげて求愛します。 →蕪、蝋梅(蝋月)。雉。鮟鱇。 二十四節気「大寒(だいかん)」 ・款冬華(ふきのはなさく)1月20日頃 雪の下からふきのとうが顔をだす頃。香りが強くほろ苦いふきのとうは早春の味。 →小松菜、南天。赤貝。あおじ。 ・水沢腹堅(さわみずこおりつめる)1月25日頃 沢に厚い氷が張りつめる頃。沢に流れる水さえも凍る厳冬ならではの風景です。 →水菜、福寿草。わかさぎ。じょうびたき。 ・鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)1月30日頃 鶏が鳥屋に入って卵を産み始める頃。本来、鶏は冬は産卵せず、春が近づくと卵を産み ました。 →金柑。めひかり。 俳句 冬 湖の鏡にさむし比良の山 支考 春遅し敦賀の津まで比良の雪 素堂 比良三上雪さしわたせ鷺のはし 芭蕉 寒梅やさす枝に白き比良嶽 巴人 和歌 冬 ・楽浪の比良の山風の海吹けば 釣する海人あまの袖反かえる見ゆ ・吹き迷う雲をさまりし夕なぎに 比良の高ねの雪を見るかな 為美 ・夕づく日比良の高ねを眺むれば くるるともなき雪の白妙 元恒 ・近江路や北より冬はきにけらし 比良の大山まづしくつつ 公朝 ----------- 社日 春分(3月21日頃)と秋分(9月23日頃)に最も近い戊(つちのえ)の日を「社日」とい います。春の社日は「春社」、秋の社日は「秋社」とも呼ばれ、土地の神様をまつる日 とされています。 社日の由来 春の社日の頃は種まきの時期にあたり、秋の社日の頃は収穫の時期にあたります。その ため社日は重要な節目と考えられ、春は五穀の種子を供えて豊作を祈り、秋は初穂を供 えて収穫を感謝するようになりました。 社日を祝う習慣は元々中国にあり、「土」という意味がある「戊」の日に豊作祈願をす るもので、「社」とは土地の守護神のことを表しています。 この風習が日本に伝えられると、土地の神様を信仰する日本の風土に合い、重要な農耕 儀礼として全国に広まったようです。 地域で違う様々な行事 社日は「土の神」をまつるので、この日は農作業など、土をいじることを忌む風習が各 地に見られます。また、土地の守護神というよりも農耕の神様と捉える地域もあり、信 州の「お社日様」は春は神迎え、秋は神送りとして餅をついて祝ったといいます。 また、博多では古くから「お潮井」と呼ばれる箱崎浜の真砂を、「てぼ」という竹かご に入れて持ち帰り、玄関先に下げておく風習があります。「災いを除き福を招くもの」 として、身を清めるお祓いに用いられたり、建物や土地のお祓いや田畑の虫よけなどに もまいてお清めとします。 社日は、その土地ごとの神様を祝うので行事の形は様々です。 七十二候の最終候「鶏始乳」。からだを温める飲み物「たまご酒」。 1月30日から七十二候の「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」になります。春の 到来を感じた鶏が鳥屋に入って卵を産み始める頃という意味です。本来、鶏の産卵期は 春から夏にかけて。冬は産卵をしなかったのです。 鶏は、夜明けになると鳴いて朝を知らせます。天岩戸の神話では、岩屋に隠れてしまっ た天照大神をなんとか外に出そうと様々なことが試されますが、その中のひとつが「長 鳴き鳥を鳴かせてみる」ということでした。この長鳴き鳥というのは鶏のこと。ただ、 神話では天照大神を岩屋から出すことはできなかったようです。 「鶏始乳」は七十二候の最後の候。次は、第一候の立春!いよいよ春ですね。 とはいうものの、寒さはまだまだ続くので風邪に注意しましょう。予防にはうがい、手 洗いはもちろんですが、からだを芯から温めてゆっくり休むのも大切です。そんな時に おすすめなのは、昔ながらの「たまご酒」。 たまご酒補正DSC_3143.jpg 卵は良質のたんぱく質が豊富です。また、卵白に含まれる「リゾチーム」という酵素は 風邪薬にも使われている成分で、殺菌効果と免疫力を高める働きがあるそうです。卵は 半熟が最も消化の良い状態ですから、お酒に溶かして飲むたまご酒は、効率良く栄養成 分を摂取でき、日本酒の効果でさらにぽかぽか。 たまご酒のおいしい作り方をご紹介していますので、ぜひお試しください。 【季節のめぐりと暦】七十二候 http://i-nekko.jp/meguritokoyomi/shichijyuunikou/ 【食の歳時記・旬の味】たまご酒 http://www.i-nekko.jp/shoku/2016-012710.html 「初午」は2月の最初の午の日。この日は稲荷神のお祭りで、全国各地の稲荷神社で豊 作、商売繁盛、開運、家内安全を祈願します。稲荷神のお使いといわれるキツネの好物 の油揚げや、初午団子を供える風習もあります。 初午の由来 稲荷神社は全国に約4万社。農業、漁業、商売、家庭円満にご利益があるとされ、京都 市伏見区の伏見稲荷大社が総本社です。伏見稲荷によると、和銅4年(711年)の2月の 最初の午の日に、祭神が稲荷山(伊奈利山)の三箇峰に降りたという故事から、稲荷神 を祭る祭事が行われるようになったとされます。 初午イメージ 旧暦2月の初午の日は今の3月にあたり、ちょうど稲作を始める時期だったため、農耕の 神様を祭るようになりました。稲荷の名は「稲生り」から来たともいわれています。 また、その日から習い事を始めるという風習もありました。 初午は伏見稲荷をはじめ大阪の玉造稲荷、愛知県の豊川稲荷など、各地の稲荷神社で盛 大に祭がとり行われます。ご近所のお稲荷さんにも赤いのぼりが立ち、賑やかになるで しょう。初午の日には、赤飯や油揚げ、団子などを供えて祭ります。 初午のお供え物 いなり寿司 稲荷神社といえばきつねがつきもの。きつねは稲荷神のお使い役で油揚げが大好物。初 午の日には、油揚げや油揚げにすし飯を詰めたものを奉納しました。これが、いなり寿 司の始まりで、きつねの大好物の油揚げを人間もたくさん食べられるよう考案されまし た。稲荷神社もいなり寿司も親しみを込めて「おいなりさん」と呼ばれています。 いなり寿司は、東日本では米俵に見立てた俵型ですが、西日本ではきつねの耳に見立て た三角が主流です。 いなり寿司イメージ しもつかれ また、初午の行事食として有名なのが、栃木県を中心に北関東に伝わる「しもつかれ」 です。鮭の頭と、鬼おろしですった大根やにんじん、油揚げ、大豆、酒粕と煮る煮つけ で、おせち料理や節分の豆の残りなどをうまく使った栄養満点の郷土料理です。 ※しもつかれについて詳しくはこちらをご覧ください。 → しもつかれ 初午団子 初午には蚕の神様を祀る行事も行われました。養蚕をしている家では、繭がたくさんで きるようにと願い、餅粉で繭の形に作った団子をお供えしました。地域によっては、団 子を繭玉に見立てて中に小豆を一粒入れたり、ざるの中にマブシ(わらのようなもの) を入れて蚕が繭を作るように飾ったり、繭がシミにならないよう醤油をつけずに食べた りします。 また、初午団子をたくさん振る舞うと、繭から毛羽をとる「繭かき」の作業が賑やかに なってよいといわれ、近所の家に配る風習もありました。 十二支の中の「初」祭事 十二支には「初午」のほか、「初」をつけてその時期にふさわしい催事を行う風習があ ります。 ・初子(はつね):正月または11月の最初の子の日 正月最初の子の日には、野に出て小松引きや若菜摘みなどの子の日遊びが行われ、11 月最初の子の日には、商家では大黒天を祀った。 ・初丑(はつうし):夏の土用のうちの最初の丑の日 鰻を食べたり、丑湯に入ったりする風習がある。 ※初丑について詳しくはこちらをご覧ください。 → 土用 ・初寅(はつとら):正月最初の寅の日 福徳を願って毘沙門天に参詣する風習がある。 ・初卯(はつう):正月最初の卯の日 初卯詣が行われる。 ・初辰(はつたつ):正月最初の辰の日 防災のまじないをする日。 大阪の住吉大社では、月の初めの辰の日に「初辰まいり」を行い、48回で四十八辰= 始終発達するとされている。 ・初巳(はつみ):正月最初の巳の日 弁財天に参詣する風習がある。 ・初申(はつざる):旧暦2月の最初の申の日 奈良の春日神社の祭典が行われる。 ・初酉(はつとり):正月または11月の最初の酉の日 浅草鷲神社の祭礼がある。酉の市も各所で開かれる。 ※初酉について詳しくはこちらをご覧ください。 → 酉の市 ・初亥(はつい):正月最初の亥の日 摩利支天(まりしてん)の縁日がある。 二十四節気の最初の節気ということで、立春を基準にさまざまな節目が決められていま す。 また、旧暦では立春のころに元日がめぐってきて、立春と正月はほぼ重なっていました 。必ずしも立春=元日にならないのは、二十四節気は太陽の動き、元日は月の動きで決 められていたからです。 いずれにしても、立春が新しい年の始まりであり、「新春」「迎春」などの言葉にその 名残がみられます。 春冬至と春分の中間にあたるのが立春。暦の上の春は、立春から立夏の前日までをさし ます。 節分立春の前日。豆をまくなど、邪気を祓う風習があります。 八十八夜立春から数えて88日め。この日に摘んだお茶はよいお茶になるといわれていま す。 二百十日立春から数えて210日め。台風が来ることが多いとされています。収穫間近の ころにやってくる台風は、稲作の大敵です。 二百二十日立春から数えて220日め。二百十日とともに農家の厄日とされています。現 代ではこの日の方が台風と重なることが多いです。 立春正月 立春を華やかに祝う国としては中国が有名。横浜の中華街では毎年「春節(しゅんせつ )」のイベントを開催し、獅子舞や爆竹で祝います。 立春大吉 立春の早朝、禅寺の門に貼り出される文字。「立春大吉」の文字は左右対称で縁起がよ く、厄除けになるといわれています。 今日は2月8日、「事八日」の日。 実は2月8日は「事始め」の日でもあり、「事納め」の日でもある、「事」を始めたり納 めたりする大事な日とされてきました。 「事」とは、もともと祭りあるいは祀りごとを表す言葉で、コトノカミという神を祀る おまつりの日です。そのおまつりが12月8日と2月8日の2回あり、「事八日」「事の日」 などといわれました。コトノカミが「年神様」か「田の神様」かで、事始めと事納めの 時期が逆転するのです。 詳しくはこちらをご覧ください。理由を知れば「なるほどね!」と納得がいきますよ。 【暮らしを彩る年中行事】事始め・事納め http://i-nekko.jp/nenchugyoji/sonohoka/kotohajime/ また、事八日には「針供養」が行われます。 針供養とは、古くなった針や、折れたり曲がったりした針、さびた針などを神社に納め て供養し、裁縫の上達を願う行事です。その昔、針仕事は暮らしに欠かせない仕事でし た。針供養では、役目を終えた針に感謝して、こんにゃくや豆腐に刺して拝みます。針 供養は道具に感謝しながら大切に使ってきた日本人の心がうかがえる美しい風習です。 地方や神社によっては12月8日に針供養を行うところもあります。 pixta_17260553_S針供養.jpg また、事八日には「お事汁」を食べるという風習もあります。お事汁とは、里芋、大根 、にんじん、ごぼう、こんにゃく、小豆などを入れた味噌汁で、これを食べて無病息災 を願います。地方によって入れる具材はいろいろあるようですが、野菜がたっぷりとれ るので、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富。寒い季節に体の芯から温まる伝統の健 康長寿食といえますね。作り方はこちらでご紹介しています。 【四季と行事食】お事汁 http://www.i-nekko.jp/gyoujishoku/fuyu/otoso/index.html そして、明日からは七十二候の第2候「黄鴬?睆(うぐいすなく)」です。山里で鴬が 鳴き始める頃。春の訪れを告げる鴬は「春告鳥(はるつげどり)」とも呼ばれます。「 梅に鶯」とよくいいますが、梅の花も早春一番に開花するおめでたい花。このふたつの 取り合わせは人々の理想のイメージで、「取り合わせが良いふたつのもの。美しく調和 するもの」という意味があります。 各地で梅まつりも開かれる頃です。早春のお出かけ先にぴったりですね。
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