80年代、成年から壮年へ、頑張った時代である。 読売新聞の連載記事である「昭和時代」を読むと懐かしさと悔悟に加え、今の 時代の姿の写し絵のような世情が垣間見られる。正に歴史は繰り返し、温故知新 の必要性をあらためて感じる。 1.80年代の記事より ここでは1980年代の新聞記事を引用とそれに対する論評を紹介していきたい。 ①働き過ぎ・遊び過ぎ ? 睡眠不足増える 日本人は宵っぱりで、成人の3人に1人が睡眠不足。NHKの世論調査部が昭和35年から5年 に1回実施している「国民生活時間調査」の昭和60年度の調査結果が、2月28日まとまっ た。それによると、夜ふかしをする人が前回調査より増え、平均睡眠時間は平日で前回 より9分短い7時間43分。 (読売新聞:1986年3月1日) →7時間43分と聞くとたくさん寝てるという印象を感じてしまいます。実際、2010年 のNHKの調査では平均睡眠時間は7時間14分となっており、25年でさらに30分近く 短くなっているそうです。昨今では短眠法が注目されたりと睡眠時間を削ってやりたい ことをやるという志向が増えていたり、睡眠は習慣であり長短は関係ないという意見 もあったりしますが、この短眠傾向が良からぬ結果を招くのではないかと懸念していま す。 (http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/yoron/lifetime/014.html) ②親子の同居志向強まる 親子は、同居か、同居しない場合も近くに住みたいと考える人が親子とも約8割を占め 、しかも子の若い世代ほどそう望んでいることが、3月20日、経済企画庁がまとめた 「長寿社会へ向けての生活選択」調査で明らかになった。 (読売新聞・朝日新聞:1986年3月21日) →1986年に同居志向が強まっていたというのは驚きである。 しかし現実には、1986年以降三世代世帯は減少傾向にある。 (参考:年々増える核家族と一人身世帯…種類別世帯数の推移をグラフ化してみる http://www.garbagenews.net/archives/1344618.html) 2015年現在、同居志向の人はどれくらいいるのだろうか。 ③新人類は”フリーアルバイター”志向 フリーアルバイターということばをよく見かけるようになった。学校を卒業しても会社 に入らなかったり、入ってもすぐに退社して、アルバイトで生活している若者たちが、 自分たちのことをそう呼び出したのが始まりらしい。 (読売新聞:1987年11月7日) →フリーター(=フリーアルバイター)という言葉は20年ですっかり定着しました。 この時代は自己選択でフリーターを選ぶことが多かったらしく、現代においても その印象でフリーターも捉えられてしまっている部分はあるのではないかと思います。 ④生活に満足68%?総理府世論調査 生活への「満足度」「充実度」「中流意識」のすべてで、女性が男性を上回っている ことが、総理府が11月2日発表した「国民生活に関する世論調査」で分かった。 (読売新聞・東京新聞:1987年11月3日) →タイトルを見ると、当時の生活満足度の高さがうかがえる。 (別団体調査になるが、2007年の調査では満足度は46.2%となっている。 http://www.research.nttnavi.co.jp/304z/701koufuku.html) ⑤生きがい新旧格差 20歳代の社員ほど、家族を犠牲にして仕事に打ち込むことに否定的であり、生きがいを 仕事以外に求める人が3分の1を占めている。日本能率協会が11月24日発表した「生活意 識多様化調査」で20歳代と40歳代の「新・旧対比」がはっきりした。 (朝日新聞:1987年11月25日) →1987年の20歳代というと、2015年現在40歳代だと思うが、実感値として家族を犠牲 にして仕事に打ち込む40代が多い印象を受ける。 それは立場によるものもあるかもしれないが、例えば「残業後に会社チームで飲み会に 行く」「会社のゴルフ大会に精を出す」など、生きがいを仕事に求める人が多いのでは ないだろうか。 近年取られるアンケートでも20代の仕事離れが進んでいるという話題がたびたび取り上 げられるが、20年後には立派に仕事人間になっていると思うので、あまり問題視する必 要性はないのかもしれない。 2.91年の世相は、 80年代を総括すると言う意味でここに1991年12月28日の朝日新聞の社説が ある。今に当てはまる内容もあり、中々に面白い。20数年経とうと人は良きにつけ 悪しきにつけ変わらぬもの、あらためてそう思う。 「富士銀行の不正融資7000億円、証券の損失補てん総額2164億円、竹井博友元 地産会長の個人脱税34億円、倒産企業の負債総額7兆918億円。 バブルの宴のあとだ。ケタ違いの数字に、社会の金銭感覚もすっかりマヒさせられて しまった。 この秋、七五三の子供のためにホテルで開く、結婚式ばりの豪華披露宴が、静かなブー ムだった。 競馬の有馬記念では五百億円余りの札束が舞った。かってない物質的豊かさを手にした 日本だが、社会基盤の未成熟から、本物の快適さや充実感を与えてくれるものは、案外 少ない。 ー満足感を共有できない社会ー それぞれが、豊かさをいささか持て余しながら、自分だけの小さな世界で、そのはけ口 を求めている。若者は独特の省略言葉で、大人をケムにまき、世界の10大ニュースの 上位に女優のヌード写真集を選んだりする。世の中わかりにくい政治家の永田町語、 証券業界の兜町語なども横行した。 価値観の多様化、といえば聞こえはいいが、それはある意味で、連帯感や潤いに欠けた 未成熟社会の姿でもある。戦後復興から高度成長期、国民は「豊かさの実現」という 共通の目標に向け、貧しいながらも充実感を共有した。だが、いまやゆとり志向、 生活大国への道は遠く、当面共有できる目標は見当たらない。 今年は、こうした目的喪失社会の中で不公正や格差、バブル現象など、戦後社会 のマイナス面が突出した。本紙読者が選んだ「日本10大ニュース」は、その屈折した 世相を色濃く映し出した。、、、、 今年の世相を見ると「豊かさの底が見えた」との印象が強い。勤労者世帯の平均 貯蓄額が、初めて一千万円を超えたが、マイホームはなお高嶺の花だ。人手不足 もますます深刻化、過労死も問題となった。、、、、 真珠湾50周年の今年、政治や経済、社会など全ての面で、制度疲労が表面化して きた。戦後の日本経済を支えて来た収益至上主義と企業中心社会は、その典型と 言えるのではなかろうか。何を残し、何を改革するのか。変革期に最も必要なものは 志しである。」 3.その他 少し気になった事件他を列記してみる。 ・チェルノブイリ原子力発電所事故とは、1986年4月26日1時23分にソビエト連邦 (現:ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた原子力事故。 後に決められた国際原子力事象評価尺度 (INES) において最悪のレベル7 (深刻な事故)に分類される事故である。 ・1987年10月19日に起こった、史上最大規模の世界的株価大暴落。ニューヨーク株式 市場の暴落を発端に世界同時株安となった。暗黒の月曜日(あんこくのげつようび) ともいう。 ・グリコ・森永事件 1984年3月の江崎グリコ社長を誘拐して身代金を要求した事件を皮切りに、江崎グリコ に対して脅迫や放火を起こす。その後、丸大食品、森永製菓、ハウス食品、不二家、駿 河屋など食品企業を次々と脅迫。現金の引き渡しにおいては次々と指定場所を変えたが 、犯人は一度も現金の引き渡し場所に現れなかった。犯人と思しき人物が何度か目撃さ れたが逃げられてしまったため、結局正体は分からなかった。 ・昭和天皇崩御。皇太子明仁親王が即位 天皇誕生日の異変は大事に至らなかったが、87年の8月から9月にかけて度々嘔吐が 見られ、精密検査で腸の一部が閉塞していることが判明した。手術を受け、一旦は 回復したものの、88年9月に大量吐血して重体に陥り、1989年(平成元年)1月に 崩御された。 ・葬式ごっこ 「俺だってまだ死にたくない。だけどこのままじゃ「生きジゴク」になっちゃうよ」。 切実な訴えを遺書に込め、東京都中野区立中学校2年生の男子生徒A君(13歳) が命を絶ったのは、86(昭和61)年2月1日。父親の実家に近い国鉄盛岡駅 ビルのトイレで、首をつっているのが見つかった。、、、、、 文部省が「いじめ」の発生件数を最初に調査したのは、A君が自殺した前年の85年。 静岡、茨城、大阪、和歌山などで中学生の「いじめ自殺」が相次いで報道され、 社会問題として認識されるようになった。 他にも、「寝たきりの深刻化、認知症の増加」「雇用情勢の変化、派遣労働者の増加」 など現在切実な問題となっている社会問題の多くがこの時期からもすでに顕著に なっている。
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