慶應義塾大学SFCソーシャル・ファブリケーション・ラボは、オープンソースのWebブラウザ「Firefox」を開発するMozillaの日本法人「Mozilla Japan」が中心となって開発を進めているオープンソースハードウェア向けドキュメント共有エンジンをベースに、2015年1月に「Fabble」というWebサービスを実験的に開始しました。
ものづくりの手順と記録を共有する機能があり、大学でのレポートやハッカソン、ワークショップでの利用を想定して、現在もさまざまな開発が進められています。本連載では、そのFabbleの開発に携わった方たちが開発の背景や利用シーンなどを解説。日本発のものづくり共有サービスについて紹介します。今回はファブ施設での活用事例をファブラボ鎌倉/国際STEM学習協会の渡辺ゆうかさんに寄稿いただきました。(編集部)
ものづくりの手順と記録を共有する機能があり、大学でのレポートやハッカソン、ワークショップでの利用を想定して、現在もさまざまな開発が進められています。本連載では、そのFabbleの開発に携わった方たちが開発の背景や利用シーンなどを解説。日本発のものづくり共有サービスについて紹介します。今回はファブ施設での活用事例をファブラボ鎌倉/国際STEM学習協会の渡辺ゆうかさんに寄稿いただきました。(編集部)
こんにちは、ファブラボ鎌倉の渡辺ゆうかです。これまでの記事では、Fabbleの開発に至るまでの背景や、大学での活用事例が紹介されてきました。私は、ファブラボ運営者ということもあり、実際に行っている4つの取り組みからFabble活用法をご紹介していきます。
- インターン育成編/トレーニングのログとしての活用
- FUJIMOCK FES (フジモックフェス)/ 活動記録のアーカイブとして
- 遠隔ワークショップでの可能性/地域間の差異を知る
- OPEN EDUCATION/(先生方も巻き込んだ)Fabbleの新しい使い方を考える
1.インターン育成編/トレーニングのログとしての活用
ファブラボ鎌倉では、定期的にインターンを募集しています。新しい出会いにワクワクしながらも、いつも悩むのが知識の伝達です。何かを学ぼうと鎌倉まで来てくれる人たちは、FABのスキルを学びたいという思いがとても強いです。期待に答えたいと思いながらも、時間も限られている。 そうした中で、「Fabbleをインターン育成に使えないかな」というアイデアが浮かびました。そのころ、千葉県の幕張から鎌倉まで通っていたインターンのTくんがいたので、TくんのFABスキルの習得、その行為を継承する記録としてFabbleが活用できるか検証することにしました。
Webに情報があまりない内容を載せるために選んだのが、ローランドDGの「monoFab SRM-20」というCNCミリングマシンです。ファブラボでは「オリジナル基板づくり」に使っています。まだまだ一般的ではないですが、基板づくりを早速Tくんに覚えてもらい、そのプロセスをFabbleで紹介してもらうことにしました。それが下記のページです。まとまった記録を残していくことで、Tくんのログは今でも新規インターンの予習復習に役立っています。
Fabble活用のポイント:インターン育成編
- ドキュメンテーション:制作記録を取る習慣を身につける
- 「インターン」で何をしていたか? が明確になる
- インターンのノウハウを引き継ぐ:運営スタッフの負担が軽減できる
- あまりWebにない情報を掲載することでオープンな文化に貢献できる
2. FUJIMOCK FES での活用法/活動記録のアーカイブとして
次に紹介するのは、特定多数の参加者によるイベントでのFabble活用法です。イベントの名は「FUJIMOCK FES」(以下:フジモックフェス)といいます。このプログラムは、富士山麓に分け入って自分で切り出した間伐材で、モックアップ(アイデア模型)を作るフェスです。POPなネーミングにしつつ、始めた動機は強い思いがあります。少しずつFAB機材が身近になるからこそ、素材から作り手が意識することで、日本の森と生活をゆるやかにつなげて森を元気にしたい、という願いがあってこのイベントを開催しています。富士山の麓を拠点とする自然ガイドのプロ集団ホールアース自然学校、静岡県内の若手きこりさんたちとファブラボ鎌倉が連携し、2012年に第1回を開催しました。「森の活動に携わるなら最低10年はやる!」といって、今年で5回目になります。全体の構成は大きくは変わっていません。森に入り木材を調達して、半年かけて自分の作りたいものを作る。参加者の手で乾燥、製材、制作していきます。
このイベントに本格的にFabbleを導入したのは第4回目からです。それ以前は、Fabble使用の推奨はしたけれどプレゼン時の発表方式は任意にしていました。Fabbleを正式にプレゼン方法として採用したことで、時間や記録の効率がとても向上しました。第3回の参加者の数名の方が、作品記録をFabbleに掲載してくれたこともあって、Fabbleを通じてどこまでできるか、何ができるかざっくりと想像できたので、第4回に参加された方からの質問の質も変わりました。「何ができますか?」から「Fabbleにはこの作例がありますが、私はこうしたいのです。どうしたらこれができますか?」といった感じです。ささいな変化かもしれませんが、実は大きな変化だとも感じています。
フジモックフェスでは、100プロダクトを目指してFabbleに記録を残していくことを目指しています。木工のプロやプロダクトデザイナーではない一般の方々による作例というのも特徴です。それぞれの着眼点で木材と向き合い、試行錯誤して作った作品だからこそ自由な発想があふれています。「失敗」を共有すれば、それは「教訓」になります。失敗を恐れずに取り組む猛者たちがたくさんいます。毎年更新されていく作品アーカイブですが、作例は多岐に渡ります。携帯充電器、木材加工するためのアプリケーション、光る丸太、木を油で揚げたり、板チョコなどなど、それまでの木工とはひと味違う概念を加えてくれるのも、フジモックフェスの醍醐味です。
今年もフジモックフェスを開催するので、興味のある方はぜひ!!
詳しくは、FUJIMOCK FESの公式ページで(早割有り)
詳しくは、FUJIMOCK FESの公式ページで(早割有り)
Fabble活用のポイント:FUJIMOCK FES
- 長期プログラムで参加者同士が進捗を共有するのに便利
- プレゼンも効率的に行える/PCを切り替えるのではなくURLを切り替えるだけで済む
- 作例が集約されており説明や管理が楽
- 作品事例があることで、作品の質やバリエーション向上が期待できる
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